たいらのら

たまに詩を書きます。 まれに書きます。 ↓エッセイ https://sutekibu…

たいらのら

たまに詩を書きます。 まれに書きます。 ↓エッセイ https://sutekibungei.com/users/75yxm ↓小説 https://mypage.syosetu.com/1782220/ ↓短歌 https://utakatanka.jp/kajin/5015

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【詩】記憶

ぼくらは覚えてしまったら それまでの過程は忘れてしまう 覚えるまでの苦楽もみんな だから忘れてしまったら 何もなかったのと同じだ 最初から何も ぼくらは人のせいが得意だから 製造過程を先人のせいにしてしまう 存在理由を問うこともせず 毒の使い道ばかり考えている ぼくらは死んでしまうから 忘れられてしまって ゆるされてしまう だから求めてしまう ぼくらが生きていたって記憶を 指の隙間からこぼれ落ちた 細やかな希望を探している ぼくらは二回死ぬように ただの記憶の乗り物だか

    • 【詩】夜を懐かしむ少年【エッセイ】

       いつものように工場の帰りにコンビニで二十円引きの弁当と酒を買った。その日は五十度を越える室内での作業があり、体はナメクジが這ったようにべたついてひどく不愉快だった。早く帰ってシャワーを浴びたい。夜にもかかわらずセミが鳴いていてさらに癇に障る。蒸し暑いのに喉の乾きは増すばかりで、俺は缶ビールを飲みながら家に向かって歩いていた。  この信号はいつだって赤だ。  対面に立つ女の足を視姦しながら信号待ちをしていると、自転車に乗ったガキ二人がやってきて俺の横に止まり、その片割れがこう

      • ココア共和国2024年3月号電子版に詩が載っています

        ココア共和国2024年3月号の投稿詩佳作集Ⅲに自作詩を掲載していただきました🙏 たいらのら「愛想笑い」 という詩です。 電子書籍版の方でしか読めません。(紙の方は未掲載) よろしくお願いします! ココア共和国PDFダウンロード版↓ https://www.youyour.me/cocoa-shop

        • 【詩】臆病な犬のクオリア

          きみの幼い暴力がすきだよ 肌に絡みつくような サディスティックな笑みを浮かべて 力を振りかざすきみは得意げ 算数のこたえがわからないのは恥ずかしいけど 人の感性はわからなくても恥ずかしくないね 人をあざわらうことで 心を保ってたんだよね 臆病な犬ほどよく吠える 監獄ごっこの看守になって きみはきみでいられなくなっちゃった 言葉ひとつで繰り上がるほど 世界はやわじゃないんだよ レビューサイトでこたえ合わせはやめよう ぼくらはおなじ色でさえちがうように感じてる 絶対的なも

        • 固定された記事

          【詩】かしこいミノムシ

          ミノの中に閉じこもり退屈そうに身体を揺らす きみはかしこいから周りの虫たちとは話が合わない 地球が回っていることも知っていた アリストテレスもたいしたことないなって鼻を鳴らした きみは議会に立っていた おおきな手に捕らえられ身ぐるみを剥がされた あわててこしらえたミノでうまく着飾ったつもりさ 歓声があがる 得意げに一礼してみせる 気づかなかったよ きみはただ知っているだけ そのことだけを知らなかった そこは議会ではない 観察される虫かごの中 毛糸や色紙をまとったカラフル

          【詩】かしこいミノムシ

          【詩】絶対的不幸

          お心づかいありがとう 悩みなんてひとつもないよ あなたに話せる程度のものは わたしの悩みはわたしひとりのものなので どこかのだれかの空腹で紛れる程度の不幸しか 知らない人に話せることはないのです 「ちちんぷいぷい」なんて言葉で飛んでくほどの痛みなら こう苦しんでいないのです お心づかいありがとう 悩みなんてひとつもないよ だからそっとしておいて 相対的な視点など慰めになんかならないの どうしてこうもかたくなに口を閉ざしているかというと きっと知りたくないのでしょう この

          【詩】絶対的不幸

          ココア共和国2024年1月号に詩が載っています

          ココア共和国2024年1月号の投稿詩傑作集Ⅱに自作詩を掲載していただきました🙏 たいらのら「悪食」 という詩です。 紙の本でも電子書籍版でも読めます。 よろしくお願いします! 紙版↓ https://amzn.asia/d/6kh45lE 電子版↓ https://www.youyour.me/fix

          ココア共和国2024年1月号に詩が載っています

          ココア共和国2023年12月号電子版に詩が載っています

          ココア共和国2023年12月号の投稿詩佳作集Ⅲに自作詩を掲載していただきました🙏 たいらのら「匂いのない海」 という詩です。 電子書籍版の方でしか読めません。(紙の方は未掲載) よろしくお願いします! ココア共和国PDFダウンロード版↓ https://www.youyour.me/cocoa-shop

          ココア共和国2023年12月号電子版に詩が載っています

          【詩】残暑

          上下に揺れる天井がクジラのおなかの中みたい 生臭い湿った熱気が肌を包んでる カーテンには勾玉形のプランクトン 月明かりに照らされて布団に大きな陰を落としてる 見ないように目をつぶれば聞こえてくるのは雨音ばかり しとしと 泣いているような 足の裏が熱くてモゾモゾして眠れない 折り畳まれた布団の隙間で冷やす ちがう段へちがう段へ 忙しくって眠れない どくだみでいっぱいの庭にやってくるのは不気味なキリン 胴が座布団のキリン ぼくをおどかしてる 雨は水を打つ音に変わった ぴちゃぴ

          【詩】うろうろ犬うろうろ

          ろろう犬ろうう犬ろ犬犬ろうろろうろううろうろろろ ろうろろろうろろろ犬ろうろろろうろろうろうろろ犬 ろうろろうろううろろろろろろろろろろ犬ろろろろう うろろろううろろろろろろ犬ろううろうろろろろろろ ろうろ犬ろろろうろうろろろろろろろろろろろうろろ ろろううろろろ犬ろろろうろうろろう犬うろううろろ ろろろううろうろろろろろろろろうろう犬ろろろうう ろうろろうろろろろろろろううろろろろろうろううう うろろうろろろうろろろろろろろろろろろううろ犬ろ うろろうろうろろろううろうろう

          【詩】うろうろ犬うろうろ

          ココア共和国2023年10月号電子版に詩が載っています

          ココア共和国2023年10月号の投稿詩佳作集Ⅱに自作詩を掲載していただきました🙏 たいらのら「臆病な犬のクオリア」 という詩です。 電子書籍版の方でしか読めません。(紙の方は未掲載) よろしくお願いします! ココア共和国PDFダウンロード版↓ https://www.youyour.me/fix

          ココア共和国2023年10月号電子版に詩が載っています

          【詩】いつか誰かに殺されても

          肩をはずしてしまいたい なにもかもが嫌になってしまった 楽しいはずのあそびが仕事になってしまった夜 いつか誰かに殺されるだろう 愛されることを求めすぎたからだ 逃れようのないことから目をそらすのはやめた せめてその誰かが誰でもいいように すべての人を愛そうと思う 相手役はまだわからないけれど 「きみになら殺されてもいいよ」 最後のセリフは準備できてる もう充分あがいたはずだ みんなとおなじ服を着て おなじご飯を食べて おなじタイミングで笑った もう気づいただろう 人真似で

          【詩】いつか誰かに殺されても

          ココア共和国2023年5月号電子版に詩が載っています

          ココア共和国2023年5月号の投稿詩佳作集Ⅲに自作詩を掲載していただきました🙏 たいらのら「記憶」 という詩です。 電子書籍版の方でしか読めません。(紙の方は未掲載) よろしくお願いします! ココア共和国2023年5月号PDFダウンロード版↓ https://www.youyour.me/cocoradefix2104

          ココア共和国2023年5月号電子版に詩が載っています

          ココア共和国2023年8月号に詩が載っています

          ココア共和国2023年8月号の投稿詩傑作集Ⅱに自作詩を掲載していただきました🙏 たいらのら「かしこいミノムシ」 という詩です。 紙の本でも電子書籍版でも読めます。 よろしくお願いします! 月刊ココア共和国2023年8月号 電子版↓ https://www.youyour.me/cocoradefix2308 紙版↓ https://amzn.asia/d/fHnWfNq

          ココア共和国2023年8月号に詩が載っています

          【詩】白い計算機

          オーケストラの演奏で計算機をはじきつづける きみはバレリーナ 真理はいつだって不変だから きみのダンスがすきだ 都市にネズミがはびこるように 占い館も大はやり 正しさばかり求める街には かえって需要があるみたい ぼくもすこし目移りしている 「どちらにしようかな」 街に火を放つ 燃えさかる劇場 占い館 みんな逃げだしてしまったというのに きみだけは踊りつづける ぼくは目が離せない きみのからだが燃えつきてしまっても 計算機はまだ正しい答えを求めている いつまでたっても

          【詩】白い計算機

          【詩】体をめぐる冒険

          煙になってとけていく 君が空気にとけていく 風に乗って空を旅して やがて誰かの肺をみたす 赤血球の船に乗り 体をめぐる冒険に パイプを通って浄水場 化学工場 暗黒大陸 手を 腕を 脚を 体をうごかして  頭をはたらかせて 君はいなくなってしまう 煙草をくゆらせ待ち続けても 君はもう帰ってこない 息を目いっぱい吸いこんでも 喉が引き攣れるばかりで痛い こんな思いをするのなら 君を食べておけばよかった 僕だけの体になって 死ぬまでいっしょ

          【詩】体をめぐる冒険