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【詩】かしこいミノムシ

ミノの中に閉じこもり退屈そうに身体を揺らす
きみはかしこいから周りの虫たちとは話が合わない
地球が回っていることも知っていた
アリストテレスもたいしたことないなって鼻を鳴らした

きみは議会に立っていた
おおきな手に捕らえられ身ぐるみを剥がされた
あわててこしらえたミノでうまく着飾ったつもりさ
歓声があがる 得意げに一礼してみせる

気づかなかったよ
きみはただ知っているだけ
そのことだけを知らなかった

そこは議会ではない
観察される虫かごの中
毛糸や色紙をまとったカラフルなきみをみんな笑ってる
美しいつもりのその姿は自然界ではとても滑稽だ

誰も教えてくれなかった歓声と嘲笑のちがいを
象牙の塔に足りないものはたとえば用例

コピー機の言葉にはなぜだか艶がない
弁論と詭弁に差異はない
証明の手段は論破ではない
自由を叫びながら縛られることに盲目的な少年少女の恍惚を醒ませ

年々強まる木枯らしがミノを奪い去っていく
裸になったきみは寒さに耐えていけるかな
絶滅の音がきこえる

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