ハイブランドの購入体験にアプリの売り方の常識を覆された
以前書いたやつの続き。
AIがコンテントを無限に生成するようになった時代で生存していくには、人間味を出していかに感情に訴えかけるかが重要になると述べた。ハイブランドは機能面だけでなく感情面の取り扱いに恐ろしく長けている。そこでヒントを得るために、毎日同じ服ばかり来ていた人間が実際に身銭を切ってハイブランドに触れてみた。その体験から学んだ事を書き出してみたい。
買うまでの過程が楽しみに含まれている
今までハイブランドなんて見向きもしなかった人間だが、いざ買うとなるとそりゃもうめちゃくちゃ調べる。値段が値段だし、下手すればパソコンやカメラより高い。なぜそのブランドの服を買うべきなのか、理由を探す・もしくは作るという作業だ。
まず自分が着目したのは、服のデザイナーの人となりとかストーリーだ。例えばRick Owensに興味を抱くきっかけになったのはこちらの動画。
Rickのアトリエを、本人が紹介する企画。ゆっくりと確かな言葉選びで話す様は、せかせかした自分とは対照的で、とても魅力的に映った。
こんな事をさらっと言っちゃうのが普通にかっこいいと惚れてしまった。Yohji Yamamotoの若者に向けたインタビューも凄く面白い。
この言葉に勇気が出てくる。世界的に活躍する日本人の一人として心から尊敬する。彼の著書も読んだ。
デザイナーから生き様を学べる
無数にあるブランドから選び抜かれるからには、共通してそれ相応の新規性やメッセージ性を持っている事に気づいた。例えば、Martin Margielaの脱構築=Deconstructionを理解するために観た、彼の"手と声"が出演するという映画。
メモを取りながら視聴したけど、発見の連続だった。
めちゃめちゃストイックだ。それぞれの選択が大きな勇気を持って採られたという事も、言葉の裏から読み取れた。
全員がそうではないが、自分にとってハイブランドとの付き合いは、まずそのデザイナーを知ることから始まるようだ。機能性やデザインはもちろんだが、ブランドを選ぶにあたってデザイナーが好きかどうかが大きな要素になる。実際に買って着た時、そのデザイナーの生き様や価値観を身に纏っているような感覚が湧き上がるのを自分の中に見た。なんか心強い気持ちになった。これは大きな気付きだ。
店員自身がそのブランドのファン
購入体験で気づいた事も色々ある。ハイブランドの店員は接客態度も知識量も全然違うという点。心理テクニックのダブルバインドを使ったり在庫の少なさで切迫感を煽ったりもしない。なにより、店員自身がそのブランドのファンだというメッセージが接客を通してひしひしと伝わった。
例えばYohji Yamamotoの店員さんは、新シーズンの東京での撮影に参加して、ついにヨウジさんと会うことが出来て凄く嬉しかったと言っていた。
bagjackのショルダーバッグを探していた時、店員さんが自分の鞄を見て「côte&cielですか?めっちゃ良いですよね!」と話しかけてくれた。スマホでネットのbagjackの商品ページを見せると「そこのショップは○○でめっちゃオシャレですよね。自分もいつか行きたいんですよ」と言われ、自分の店とは関係のない所もよく知っているようで驚いた。
ただ単に客を「モノを売る対象」としてではなく「ファッションが好きな仲間」として接してくれる事に楽しさを覚えた。これも大きな発見だ。店員への先入観が変わった。
同じブランドを身に付けている人を見つけると、仲間を見つけた気分になる
ユニクロや無印はとにかく大多数に浸透しているので、同じものを身に付けている人を見ても何も思わない。一方、ハイブランドはその特徴的なデザインから街で見かけても「おっ」と思う事がある。それが自分と好きなブランドと同じだったら、「おー、君もか」という気持ちになる。着こなしの参考にチラチラ見てしまったりする。
今までは街ですれ違う同性なんて全く興味が無かったけど、ハイブランドの研究を始めてからは凄く興味深い対象になった。例えるなら、ドラムを始めると耳に入る音楽のドラムパートが気になるようになる感じに似ている。カメラを持ち歩けば風景の見え方が変わるように。
着る服が変われば他人の見え方が変わる。これも大きな発見だ。
アプリの売り方の常識を覆された
以上の気づきをまとめると:
買うまでの過程が楽しみに含まれている
ブランドを選ぶにあたってデザイナーが好きかどうかが大きな要素になる
身につけると、そのデザイナーの生き様や価値観を身に纏っている感覚になる
店員自身がそのブランドのファンで、客を「モノを売る対象」としてではなく「ファッションが好きな仲間」として接してくれる
同じブランドを身に付けている人を見つけると、仲間を見つけた気分になる
着る服が変われば他人の見え方が変わる
これらの体験は自分にとってまさにエキサイティングでライフチェンジングなものだった。身銭を切った甲斐がある(残念ながら経費には出来ないが)。ハイブランドの戦略をアプリの世界に持ち込むにあたり、めちゃくちゃヒントが得られた。
次回は、実際にアプリの戦略にどう応用するかという話を書くかも。
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