北京ドタバタ旅行(22)
午後4時、乗客が自分の席に着き、機内は落ち着きはじめた頃に、ボーイングはゆっくり移動を始めました。飛行機の機内というのはなんだかうるさいものです。ジェット機のエンジンの音が次第に高くなります。やがてボーイングは滑走路の所定の位置に着きました。ジェット機が飛び立つときの加速度は慣れた人には大した感慨を与えませんが、初めて飛行機に乗るものにはかなりの衝撃です。まして生まれて初めてジェット機というものに乗った父はまさに衝撃を越えて、恐怖だったのかも知れません。
ジェット機はブレーキを外すと全長3500メートルの滑走路を一気に走りだします。父はなんと隣の母の手を握りしめ、離しません。息子としては死ぬまでに1度くらい飛行機に乗せてやりたいと思っていたのですが、どうも父はそれを味わうだけの余裕はないようです。
実は前回、母は生まれて初めて飛行機に乗って中国に行ったのですが、母はこのジェット機の加速度がいたく気に入ったようで、会う人ごとに、いかにジェット機が素早く上昇するかを感極まった声で説明するものですから、息子としては、ここまで喜んでもらえるなら連れていった甲斐があったというものだと思っていたので、父もまた同じ様に思うかと思っていたのですが、恐怖感が先に立つようです。しかしまぁ、ジェット機が急上昇を続けたあと、水平飛行に移るとやっと落ちついたようです。
今回北京にまで行く飛行機としては日本の旅客機と中国の旅客機とパキスタンの旅客機があったのですが、値段の点で日本の旅客機は割高でした。その点で言えばパキスタンの旅客機は1番割安でしたが、言葉の問題があり、なにぶん今回はインドの隣にエジプトがあると思っている母とか、夕方に起き出して朝食を催促する父を連れて行かねばなりませんから、あまり冒険は慎まなければなりません。それに私は半年前から中国語を習っているのですから、実践で試すいいチャンスです。そういうこともあり、中国の飛行機を選んだのです。
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