35歳のおじさんがプロダンサーになるまで⑨〜社会人編Ⅱ〜
20歳。
その時、テレビでは『少年チャンプル』というダンス番組が始まっていた。
たまたま彼女が録画していたそれを、見せてもらったことがある。
(それまで私は『少年チャンプル』を知らなかった。)
そこでは『ダンスの神様』と言われる坂見誠二さんが、白黒ボーダーに身を包み、ダンスを踊っていた。
ロックダンスだ!
彼女にお願いして、そのシーンを何度も巻き戻しては再生して、見せてもらったのを覚えている。
そんな彼女とは、1年も経たずに別れた。
別れてからの半年間、私はそのことをずっと引きずっていた。
当時、益田にあったエスニック雑貨屋に常連のように通っていて、行くたびにグチを言っていたような気がする。
(店長さんと店員さんには本当に申し訳ないことをしたな……。ちなみにこの話も「別人のようで想像がつかない」と妻に言われる。)
そんなある日、後の人生や人間性を左右する、重要な出来事が起きる。
きっかけは些細な出来事。
馴染みのエスニック雑貨屋に行き、いつものように別れた彼女の話をした。
その時、
一瞬だが、店員さんが本当に嫌そうな顔をしたのだ。
(完全に私が悪く、むしろ半年間も嫌な顔をせずに聞いてくれてたのがスゴい。)
その瞬間、まるで走馬灯のように、これまでの私の人生が一気にフラッシュバックした。
"いつも結局、人に依存してばかりだ"
"誰の人生なんだ"
大袈裟かもしれないが、そんな自分に気付き情けなくなり、とにかくショックだった。
振り返れば勉強もスポーツも、人にやれと言われたことをやってきただけ。
やりたくてやった事など一度もない。
仕事だってそうだ。
私には、人生でやりたいことが、何ひとつ無い……
…………。
人間は、遠くにあるモノは見れない。
しかし、近すぎるモノもまた、焦点が合わずに見えないのだ。
数日間、悩んだ末、気付く。
あった。
たったひとつだけ。
なぜかは分からないが、ずっとずっと好きなモノが。
「自分にはダンスしかない」
その時、決意する。
「ダンスを本気でやろう」
自分の人生を生きるんだ。
季節は秋。
21歳の誕生日が迫っていた。
【未来の自分から一言】
キミは、ここから変わり始めたね。
でもキミは、この日の決意を何度も忘れそうになるよ。
そのたびに、目の前に現れる色々な人達に、大事なことを思い出させてもらうんだ。
自分に勝てないけど、決して負けない。
そんな人間らしさを抱えて、キミは歩き続ける。
☞《社会人編Ⅲ》へ続く…
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