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広報に力を入れたい時、まず何をやる?(中小企業の経営者に向けて回答)

先日ClubhouseのとあるRoomで、広報の質問をしている人がいた。その時の回答者は経済界では非常に有名な方で、質問者はおそらく小さい企業の経営者の方。
「広報に力を入れるため、まずなにをやればいいか」という問いに対し、実績に裏打ちされた明解な答えは、広報経験者からみてもとてもレベルの高いもので、私自身は大変勉強になった。しかし、質問者はなんとなくついていけないとも感じていたのではないか、とも思った。少しだけそんな雰囲気に聞こえる挨拶が交わされた後、次の方の質問に移ってしまった。

知らない方だったので真偽はわからないが、もしそうだったとしたら、ギャップがすごくわかる。
私も広報への理解がない会社で立ち上げを行ってきたし、「広報を何かやりたい」と考えていろいろ模索している中小企業の方がいることも見聞きしている。そしてこの時回答された内容は、広報のプロこそ知っておくべきことで、広報を色々と取り組んでなおレベルを上げる時に意識したい視点ではあった。

きっと、交わされる会話に必要な、知識のベースがあってなかったんじゃないかなと思う。

もし私だったらどう答えるかな…ということを、どなたかに役立つことを願ってここに書き留めておく。

なお、このnoteは中小企業を中心に「広報に初めて取り組む」経営者をイメージして書いている。そのような企業で広報に着任した方に向けてはまた別途書きたいが、過去に書いた以下noteは多少参考にしていただけるかもと思うので掲出しておく。


【1】広報の目的を整理する

「プレスリリース」「メディアアプローチ」などの専門的なことに取り組む前に、そもそも広報で何を成したいか、をひとまず考えてみていただくことをおすすめする。
パッと思いつくだけでも、顧客を増やしたい、採用人数を増やしたい、提携先を見つけたい、資金調達をしたい…など様々。その過程でメディアアプローチなどがあるのが正しいので、「広報といえばメディアアプローチ」となるのは違うこともある。広報ではなく、広告を出すのが最適解になる場合もありえる。

広報の目的は多数ありえて、上記などのように各社の状況で違うことがかなり多い。ここを整理しておかないと、広報実務に取り組み始めてもうまく効果が出ない可能性すらある。広報に力を入れたい経営者向けに以前noteを書いているので参考にしていただきたい(一部内容は上記と重複するが、実際に広報体制構築をする時に考えておくべきことも書いている)。


【2】SNSやブログなどで、期待してもらえる材料を発信していく

個人的には、プレスリリースやメディアアプローチの前にまだやれることはある場合も多いと思っていて、その話をする。

経営が忙しくて、SNSやブログで定期的に発信していない経営者はそれなりにいるのではないだろうか。もし、やっていないのだとしたら、まずはそこからやってみることをおすすめする。

というのも、経営者の思いや日々の社内での頑張りは、残念ながら社外からはほぼ見えないと言っていい。見えないものには期待できないし、応援しようとも買おうともならない。応援も買ってくれるのも、期待を高められてから。
期待されるほど気持ちが高まるまで、コンテンツ発信を「し続ける」必要がある。何が刺さるかわからないので考えを多面的に伝えていく、日々変わる気持ちの変化も伝えていく。まさに1日にて成らずだが、溜まっていった後は恩恵が大きくなる。

まだ取り組んだことがなければ、例えば以下のような記事を書いてみるのはどうか。

●経営者が、その事業にどう向き合って経営しているか
●その事業に携わる社員の思い
●その事業のこだわりと、どうしてそうしているのか(一般的な慣習との違い、もしくは他社との違い)
●ミッション・ビジョン・バリュー・ステートメントの説明


その他、以下のように発信アイデアを書いている方がいるので参考にされたい。
(大島さんのnoteにはかなりアイデアが詰まっていて必読。これを書き切る勢いでやれば状況は全然変わるはず。ぜひ参考にしていただきたい)


ちなみに、既に仕事のことについてSNS発信をしている経営者の方もいるかもしれないが、もしそれがSNS上なのであれば書く先をブログに変えて「貯めていく」ことを勧めたい。既にご自身で頻繁に発信していらっしゃる方なら(Twitterは毎日、Facebookは週1以上で仕事関係の投稿をしているのを一つの目安とする)、その幅を広げるために広報担当を入れても効果は見込めるはず。

また、どうやってもSNS発信などが苦手な経営者の方もいるだろう。その場合は広報や編集、ライターなどを巻き込んでコンテンツを作ってもらい、ブログに載せつつ、そのURLに加えてできる限り一言でも自分の気持ちを乗せてSNSでシェアをしてみて欲しい。一言だけでも、温度の乗ったコメントがあるだけで印象は変わってくるものだ。身内が熱量を持てない情報は、社外に出てシェアにつながる可能性は薄いといえるくらい大事なこと。他にも理由はあるが次の項目に。


【3】経営者もコミットする。わからないからといって誰かにまるっと投げない

発信が苦手でも、SNSでの発信を一言でも取り組んで欲しいと書いたのは、「広報担当などにまるっと投げて欲しくない」から。
広報は魔法ではない。広報を誰かに頼んだら、劇的に効果を発揮するというものではない。効果を上げるためには、経営のコミットメントが必要になる。広報の実質の指揮命令者は経営者となるからだ。

経験が長く、実績を上げてきた広報担当であればあるほど広報の目的を必ず確認する。その目的はすなわち、経営や事業の行き先に紐づく。なので、「広報は経営者の考えをもとに動く」し、指揮命令をもらうべき人として強く意識するはずだ。プレスリリースもメディアアプローチも実現手段の一つでしかない。それらのことが込み入ってわからないからといって、広報活動の取り組みそのものまで丸投げをするのは実にもったいない。

例え経営者が発信に向いていなくても、SNSの一言発信にコツコツ取り組んだりするだけでもまったく違う。広報活動に正解はなく、トライアンドエラーの中でやること必至で、しかも広報担当は社内で孤独にもなりやすく悩みも多い。そんな中、経営者と密に取り組めるというのは、広報担当にとっても一緒に進んでいる感が持ててやりやすくなるだろう。


終わりに:「広報経験者」の参画タイミングはいつが良いのか?

今回はどちらかというと、「広報を雇う前に経営者側でやれることもある」「経営もコミットしないと効果がない」という話を書いた。
要は、広報に力を入れるからといって、広報経験者を参画させることとはイコールではなく、ひどい場合はミスマッチが起こるということが言いたかった。

それには明らかな理由がある。【1】で書いた通り、広報で成すものは各社違うのだが、その経験の違いで広報担当者の広報への価値観、得意不得意がかなり違うからだ。

広報の場合、実質の指揮命令者は経営者となると先に書いた。その経営者が、広報への価値観の違いを理解できないままに経験年数や職務経歴だけで広報担当者を指名するのは、正直リスクではないかと私は考える。
ただし、広報はとても専門的な知識も要る仕事ではあるので、広報経験者の存在で広報活動・事業活動が捗る場合は確実にある。

では、最も効果が高い参画タイミングはいつなのか、私なりに考えて、効果がありそうなのは以下シチュエーションかなと。

※あくまで私は経営者経験はなく広報なので、「広報を入れたことがある経営者」だとまた答えが変わるかもです

●経営者の定期的な発信が、広がりにくくなってきた時(発信ペースなどは先述)
●費用を大きくかけるような大型キャンペーンを打つことが決まった時
● 上場を目指したり、事業承継やM&Aをしたりすることが決まった時
●複数事業をやっていく、新規事業に投資することが決まった時
●2〜3年先の経営・事業を見て、リスクが見えたり不安要素があったりする時

他にもあるかもしれないが、会社として大きくなっていく時、中が複雑になっていく時に、その複雑性からのひずみを広報活動でカバーしたり良い効果を高められたりする可能性があると思っている。

また、ここで申し上げたいのは、大型キャンペーンの「直前」に広報担当を入れても効果が薄くなりやすいため、「決まった時」に入れていただきたい、ということ。準備期間が3ヶ月〜半年くらいはないと、仕込みもできずあまり意味がない結果になる可能性が高い。

これらはあくまで一般的になるように書き出したもので、広報の目的、ビジネスモデルや価値観、社外からの期待値は各社違うため、当てはまらない場合があることをご容赦いただきたい。

今後所属先で広報の業務もサービスとしてお受けしていく予定なのと(経営管理が強い会社なので、私の行う広報業務と掛け合わせることで、特に中小企業において経営課題の解決策を広く提示できるのが強み)、Clubhouseでもカフェ形式で情報交換やお話をするRoomを開く予定で、個別相談もお受けできるように準備中。
3月より順次やっていくので、もしご興味があれば、TwitterのDM、Facebookのフォローやメッセージ、Clubhouseでのフォローをお願いできれば幸いである。


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