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【レポート】テレビノーク#12 「出来事との距離を考える」

月に一度、カロクリサイクルの活動として、話を聞きたい人をお招きしておしゃべりしている配信「テレビノーク」。
#12は7月28日(金)にお届けしました。
アーカイブはこちらからご覧いただけます👇

7月配信のテーマは「出来事との距離を考える」。
ゲストに町田市立国際版画美術館学芸員の町村悠香さんをお招きし、町村さんが担当されたふたつの展覧会について解説いただき、同時代に起きていることとそれを表象することについて考える時間となりました。

本日もスタジオ04からお届けです

今は9月も半ばになってしまいましたが、2ヶ月前の配信を振り返りながらレポートをお届けします。

2023年の夏、どう過ごしてましたか?

夏から秋にかけて水の災禍の季節ではあるものの、配信した7月末時点で、九州、北陸、秋田などで水害が起きました。瀬尾さんと大地くんのフリートークでも触れていましたね。その後、このレポートを書くまでの間に、鳥取、沖縄、千葉~福島でも相次ぎ、海外でも洪水・火事・地震が頻発し、ウクライナへの軍事侵攻も終わらず……と、連日の大変な暑さの中で、災禍も世界中で立て続けに起きていた夏でした。

わだつみのこえ記念館をみんなで来訪してのおしゃべりには、「ある視点の資料をひとつ見たときに、同時代にいた、別の立場にあった人の存在へも想像することが大事だよね」という話が出ていました。今も同時代的に起きている出来事を想像する余地が自分たちの日常のどこかで持てるか、もちろんすべてを拾うことはできないとしても、とり零しすぎていないか、折々考える季節だったようにも感じます。

という感じでカロク採訪で感じたこともおさらいもしつつ、ゲストの町村悠香さんをお呼びして、本題へ。

町村さんご登場!

町村悠香さんは東京大学大学院を修了後、2016年より町田市立国際版画美術館の学芸員に。近年に企画された主な展覧会には「彫刻刀が刻む戦後日本 2つの民衆版画運動」、「出来事との距離・描かれたニュース・戦争・日常」があります。

展覧会「彫刻刀が刻む戦後日本―2つの民衆版画運動」

展覧会「出来事との距離 描かれたニュース・戦争・日常」

「彫刻刀が刻む戦後日本」へカロク採訪記で伺ったときのレポートもあります👇

なぜ小中学校で版画を作るのか?の源流を辿るべく、民衆版画運動や中国木刻運動を紐解いた「彫刻刀が刻む戦後日本」。
出来事から少し時間が経ちつつもアプローチされていた表現にフォーカスを当て、ウクライナ侵攻が起きている今の時代に改めて見る「出来事との距離」。
今回の配信では、町村さん曰く“表裏の対”となっているこのふたつの展覧会の内容や出品作品の解説、展覧会という場を開いての振り返りを、画像もたくさん使用しながら事細かにお話しいただきました。
ぜひアーカイブをご視聴くださいませ!

町村さんと瀬尾さんは同い年!

「彫刻刀が刻む戦後日本」展にまつわる話題

・中国のルーツ / 魯迅
・2つの民衆版画運動 / 戦後版画運動と教育版画運動
・自由教育と版画の広まり
・社会運動(労働運動、農民運動)
 ー同じ立場の人たちが繋がるためのイメージとしての版画
・平和運動の高まりと版画 / 原爆の図
・各地の生活に根ざしたリアリズム / 生活綴り方との関係
・さかんにサークル活動が起きていたことで思考される教育版画(50年代~)
・世代やメディアの変換期として、表象として使われなくなる(60年代~)
・教育現場での「書かされた問題」 / 集団での創作活動
・現代とのリンク /社会的な問題や情勢に対する関心の高まり→展覧会への反響
・展覧会が「自分たちの美術史」であること

来場者から展覧会にどんな反応があった?と尋ねたところ、アンケートには“懐かしい”との反応が多く寄せられた、と話す町村さん。懐かしいという感覚も、集団活動の一環の苦手さも含まれたり、地域や世代によっても意味合いがちがっていたりする、多面的な記憶のように聞いていて思いました。
(完全に余談ですが、私の母は東北の転勤族で、幼少期に青森に住んでいた時期があり、「青森では図工は版画ばっかりだった」と話していました。棟方志功の影響が大きいのでしょうね)

「出来事との距離」展にまつわる話題

「彫刻刀が刻む戦後日本」での社会的な問題に対する関心の高まりを受け、2023年は戦争展示ばっかりなはず、と思いながら企画された「出来事との距離」展については、こんなキーワードが出ていました。

・出来事への反応の速度 
  即応しやすいメディアは?戯曲?集団性のある表現?
  展覧会は過去の作品を引用し、現代の問題とリミックスできる

・表現と発信について
 同時代には出すことが難しい、だからこそ切実に描き残された表現
 読み解き 浮世絵の中で物語の登場人物になぞらえたもの
 検閲下の表現
 ニュースと表現

・過去作品に描かれた内容のうち、どれをいま展示するか
・見ている時期の社会情勢によって、自分たちの見え方が変化していること


ナポレオン戦争を描いたゴヤの銅版画シリーズ


今はSNSで戦争のニュースを多く見ているから、悲惨なモチーフが描かれている内容の方がイメージが掴みやすくなってるのかも、という言葉も、確かにそうかも……などと思ったり。
だからこそ、これまで残されてきたものを見て、考えたり対話したりする機会が必要だなと実感した回でした。

この後どんなことをやりたいですか?という最後の質問に対して、「社会とその問いをキャッチして、反応してつくっていくんじゃないかな?」と応えてくださった町村さんのタフさを、まずは見習っていきたいと思います!

ちなみに瀬尾さんの今後やりたいことは、「孫から瀬尾へ」

お知らせ 次回のテレビノーク、マガジン『𝐍𝐎𝐎𝐊 𝐋𝐄𝐓𝐓𝐄𝐑』


テレビノーク#13は、8月18日(金)に配信済みです。
東京国立近代美術館研究員 横山由季子さんをお迎えして、現在開催中の「所蔵作品展 MOMATコレクション」にてご担当の「関東大震災から100年」のお話などを伺っていきます。
アーカイブはこちらからご覧いただけます👇


直近の生配信#14は、9月18日(月)の20時から。
先日終了したワークショップ「記録から表現をつくる」のファシリテーターを担当した小屋竜平さんをお迎えし、ふりかえってあれこれおしゃべりしていきます。
生配信中、ぜひチャット欄に質問や感想などをお寄せください!


そして、定期購読マガジン『𝐍𝐎𝐎𝐊 𝐋𝐄𝐓𝐓𝐄𝐑』も毎月15日前後にお届けしております。

《9月号のラインナップ》

語らいの記録:「死んだ人たちにインタビューしたいよな」(瀬尾夏美)
今月の絵手紙:「陸前高田市高田町、2012年秋の夜明け」(瀬尾夏美)
今月のエッセイ:「おなじうたを口ずさんで」(磯崎未菜)

マガジンの収益は、NOOKの活動継続の資金として大事に使わせていただきます。
テレビノークの配信、マガジンのご購読、それぞれどうぞよろしくお願いいたします。


レポート:佐竹真紀子(美術作家)

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