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『正欲』読んだ感想雑記

高校時代までの自分、ほぼ相槌ぐらいしか打たなくてすっごい無口だったなって思い出しちゃった
親しくしてくれる友達がいても趣味嗜好を打ち明けられないことで孤独感が抜けなかった(今は全てをさらけ出すことだけが親密さではないと思うようになったけど、それは他に理解者が居てひとりじゃないって安心できてるから思えることであって)

特殊性癖同士の苦しみには超敏感だけど不妊とか男性恐怖症なのに男性に性愛を抱いてしまうとか異性愛者ならではの他者の苦しみには鈍感というか無関心というかなの耳が痛えじゃなかった目が痛えよ(小説だからね)いかにも人間らしいな…人間…

ふたりでセックスの真似事して抱き合って、人間の重みの安心感を知って、ひとりで生きてた時間に戻れないってなってるのウッ…ウッ…;;;;;てなったよね
性的関係を持ってないと、人とスキンシップを取れる機会ってほんっっっとに無いよなって話はTwitterでも口酸っぱくなるぐらいしてますが
性行為の機会が無いって、性行為の機会が無いだけでは収まらないんですよ…
恋愛は性行為は無理でもスキンシップは、スキンシップを取れるぐらい信頼しあえる相手は欲しい、苦しいって人きっといっぱい居るんだろうなと勝手に想像してしまう…
きっと未成年の頃の私もそうだった
あと私も最初の理解者(マジョリティ性癖なので共感者ではない)が夫氏だったから分かるけど、最初の理解者との絆の固さ(依存度の高さともいう)エグいよな

伝えないと表現しないと誰にも知ってもらえない理解されないのは実際問題としてそう、だから表現したいと思ってる、でも多数派はそれを必死でやらなくても理解されやすい場面が多いから、特殊性癖者にだけそれを強いるのはしんどいって話よな
私は散文や創作で己を分析し表現することが快楽なので嬉々としてやってるけど、それを対面で口頭で相互コミュニケーションとしてやれって言われたらめっちゃしんどいし、ましてやそれを他人に強いられるなんて苦しいよな
それでもなお理解してもらえなかったら?のリスクも大きいし、だからほっといてよってなる
(でも世間に知ってもらえなかった結果がラストの展開なんだよなと思うと)

多数派も不安だからセックスの話ばっかするんだとか、人間の重さに安心するのは共感できたとか、大也が八重子とも向き合えそうと感じたシーンとか、完全なる世界との断絶ではないと希望を抱けるシーンもけっこうあった
自分もそうだったけど、世界と周りの人と自分を全く違ういきものだって過剰に分断して心を閉ざしちゃうところあるけど、実は自分自身にも月並みの感性も備わっていたり、似ているところもいっぱいあったりするんだよな

からこそ余計に最後なんでこうなっちゃうのぉぉ感も増した気はするけど
(今現在も苦しい当事者にとってはハッピーエンドにされたら自分の今の苦しさに寄り添ってくれる作品じゃなかったと感じるかもしれないもんなあ)

でもラストの展開がこうだったからって決して世界へのほんの少しの希望がそれで潰えたわけではないのよな
挫ける瞬間は山ほどあれど、誰かと向き合う分かちあうことは絶対に不可能なわけじゃない、絶対に可能なわけでもないけど

最後の夏月の諦め通り越して達観した表情を啓喜に向けるあの雰囲気、自分も含めたこじらせ特殊性癖オタクっぽさ感じてちょっとフフッてなってしまった
多数派の狭い価値観に縛られすぎていろいろ失った啓喜に追い討ちかける多数派わからせシチュですよねこれ
性格悪いわぁ〜(褒めてる)

個人間の趣味の繋がりはどんな人がいるかわかんないし危なっかしいこともあるしトラブルもつきものだから、自分で自分の身を守りつつ…楽しもうね!(教訓)
こういうリスクのある場にしかコミュニティがないのもマイノリティあるあるだよな
改めて性について安全に安心して語らい合える場って貴重でありがたいなと実感する話だったかもしれない…

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