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辻村深月「傲慢と善良」
読みだしたら止まらなくなって1日で読了。
人間が生き物として持つ性質、と言う意味で永遠のテーマと言えるであろう「傲慢」と「善良」
現代最先端のテーマである「恋愛」と「結婚」
この二つのテーマを融合させてエンタメ作品に結実させた見事な小説。
考えさせながらもぐいぐい読ませていくその筆致に感服した。
恋愛や結婚の時期を通り過ぎた自分は、架と真実を中心とした若者の物語はどの場面もわかりやすいもので、全体としてひとつのケーススタディとして読んだ。
恋愛や婚活、というものは、形が変わっただけで今も昔も中身は変わらないものだと思う。
私たちの世代だって、黙っていても相手が現れるわけではなかったのだから。
「傲慢」と「善良」は、単純な言葉で「悪」と「善」というのと同じように、人として生まれたその心の天秤に常にかけられている性質だと思う。
どの世代でも、この二つがせめぎ合う状況と言うのは巡ってくる。
その時その時の選択とその結果から学んで次に進むことを「成長」というのだと思うし、そのように人間とは「成長」していける生き物なんだな、ということを思った。
架と真実の出した答えが違っていたとしても、二人はそれぞれ、人としての成長を掴んで次のステージに進んだだろうと思う。
ストーリーにフォーカスした感想を少し。
結婚なんて長い旅路なのだから、たまには嵐も来る。
架と真実は結婚前にそれを一つ越えただけの話。
それは経験値として確実に蓄えられている。
そして、結婚とは結婚する当事者二人だけのものであるべきなのだ、ということを、娘が結婚したばかりの母親の立場として肝に銘じた物語でもあった。
朝井リョウの解説が秀逸。
的確な解説で読者を理解に導き、面白かった~という読後感に浸っている読者を次の辻村作品に誘導する。
お見事です。
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