サマーウォーズ、家族、或いは空腹。

いちばんいけないのはおなかがすいていることと、独りでいることだから

大学の時の同級生に、長野の上田出身であることを誇りに思っている人がいた。
第二外国語の授業で隣の席になった私に、初対面早々で、映画「サマーウォーズ」を紹介した。上田を舞台にした、その青春アニメを、私は当時見たことがなく、ぎこちなく頷く私を後目に、彼女は1度は見た方がいい、と力説した。その後も楽しそうに上田の話をしていた姿を見ていたせいか、上田には行ったことがないけれど、上田はきっといい所なんだろうな、と思った。

「サマーウォーズ」は、ざっと言えば、主人公が憧れの先輩の実家に行き、ヒロインの叔父が作ったAIのせいで小惑星が核施設に衝突するのを防ぐために戦う物語だ。
他のアニメと大きく違うのは、この物語が「戦い」をメインにしているのではなく、あくまで「家族の絆」をメインにしているからだ。
世界を救うために奮闘する主人公とヒロインの家族たちは、その仲の良さが、きっと多くの観客にどこか懐かしい故郷を思い起こさせたのだろう。
本作の中の、「いちばんいけないのはおなかがすいていることと、独りでいることだから」のセリフは、どうも印象深い。信頼出来る誰かがいること、独りではないこと、そしてお腹がすいていないこと。それは生きるために必要な何かが満たされている、ということだ。

一方で、妾の子であったヒロインの叔父は、居場所を見つけられず、愛してくれていたヒロインの祖母を傷つけて家出をする。世界を滅ぼせるAIを作ったのも、本当はヒロインの祖母に褒めてもらいたいがためで、ある意味「家族の絆」なんて言うけれど、上手く家族の絆を作れなかった人間が非行に走る、という「家族の絆」の悪い面も描いている気がする。

きっと大学時代に出会った彼女は上田で信頼できる誰かに出会ったのだろう。

孤独な夜のせめてもの慰めに、お腹だけは満たそう。

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