『サイバーパンク:エッジランナーズ』のオープニングについて考える
『サイバーパンクエッジランナーズ』を連日周回している。いまは7週目が終わったところ。名作は何度見返しても味がする。味がしなくなる、なんてことはないので飽きるまで噛み続ける。
頼むから観てくれ! という懇願に近い形の記事も書きました。ハマりすぎだろ。
アニメが見れない時はSpotifyで作中に登場した音楽をまとめたプレイリストをリピート再生して、お手好きになったらpixivやTwitterでサイバーパンクのファンアートを探す始末。もはや「俺がエッジランナーズだ」と名乗っていいぐらいサイバーパンク漬けの生活。しかし、このままでは溢れ出るコンテンツに溺れ、発狂するだけのサイバーサイコになってしまう。
ここは一度冷静になって、主人公デイビッド・マルティネスの行く末も暗示しているオープニングについて考えていこうと思います。
アニメのネタバレあります。
Netflix japan Youtube公式サイトからアップロードされている本作OP。
「カッコ良すぎるオープンニングタイトル」というド直球な動画タイトルから、回りくどいニヒルな言い回しは不要と判断したアップロード者の感性が素晴らしい。
次々と移り変わる極彩色のナイトシティを背景に鋭い目つきで立ち尽くす主人公のデイビッド。
原作『サイバーパンク2077』にも登場したナイトシティが舞台あること、そしてデイビットがこのナイトシティという街で関わることになる人物たちの姿が確認できる。
この時点のデイビッドはまだ軍用サイバーウェア「サンデヴィスタン」をインストールしていないものの、デイビッド・マルティネス足る愚直な性格、そして後々苦しめられる道義心を、既にその身に宿していることをうかがい知れる。
オープニング映像に合わせて流れる音楽は、EUのロックバンド「フランツ・フェルディナンド」の『This Fire』をリミックスした『This Fffire』
リミックス版の歌詞は翻訳に自信がないので、既に和訳が成されている原曲の方で考察をしたいと思います。
「抵抗不可能、完璧な支配」はデイビッドを取り巻く環境を指す。
作中序盤ではアカデミーに通っていたデイビッドだったが、問題行為を起こしてしまったり、クラスメイトから侮辱されるなど、かなり浮いた存在。問題行為などはそもデイビッドに非があるのだが、そうせざる得ない原因も、クラスメイトからの侮辱を受けた原因も家庭経済の困窮が原因だ。貧困という抗うことのできない支配を指している。
「いま、僕の心に火が点く」軍用ウェアである「サンデヴィスタン」の獲得。エッジランナー・ルーシーとの出会い。
人生を変える出来事は、希望と絶望の街で生きる少年に火をつける。
上画像1枚目は軍用サイバーウェア「サンデヴィスタン」をインストールしたデイビッドがやや勇み足気味に、前のめりで街へと踏み込んでいく。
これまでは街に存在する一般市民、背景に溶け込んだ少年でしかなかったデイビッドが、驚異の力を手にしたことで『エッジランナー』としてナイトシティという街を切り裂くように進んでいく。
上画像2枚目の時点で「サンデヴィスタン」以外のサイバーウェアも多数取り込んでいたと思われる。画像ではわからないが、映像だとデイビッドの身体が一瞬膨らんだように見えるシーンがある。アニメ中盤ではエッジランナーズのリーダー的存在であった「メイン」が死亡し、後に彼のサイバーウェアをデイビッドが取り込んだことが判明する。そして、手を歪に広げる姿は人間から離れた獣を彷彿とさせる。
愚直な性格故に死んだ仲間の意思を宿し、多くのサイバーウェアを取り込み人間から離れていく姿を描いているのではないだろうか。
足元を焼かれながらも進んでいくデイビッド。視線は相変わらず道の先を見据えている。
この足元の炎は、あくまで我々視聴者だけが視認している部分なのでしょう。誰かの意思を継ぎ、誰かの器となって、前に進むことしかできないデイビッドは、いま自分がどこにいて、どんな道を進んでいるのかは、もはやどうでもいいのでしょう。とにかく前へ、前へ進む。
彼の脳裏には、メインが残した仲間たちと、最愛のルーシーが。
物語終盤、度重なるウェアのインストールと精神を破滅させる自問でデイビッドは身体だけでなく心も限界を迎えます。非人道的な行為の数々は本来持ち合わせていた道義心をも燃やします。
この特徴的なシーンは考察の余地がないほど。両手両足を犠牲にし、ルーシーを守るため『サイバースケルトン』をインストールする。
駆け抜けるデイビッドはもう止まりません。
「この炎は制御不能 この街を燃やしてやろう、街を燃やそう」
この記事を書くにあたって『This Fire』の和訳を調べたが、この翻訳文を見てビビりました。いくら何でも本編にマッチしすぎだろ。
デイビッドは、自身を追いかける炎で街を燃やそうとしていたとも思えます。アラサカに向かうまで道中はまさにそうでしょう。身を焦がす炎から逃げる人生だったとも言える。
走り抜けたデイビッドは何者かに脳天を撃ち抜かれます。
デイビッドに銃口を向けた人物の身体にはナイトシティが透けて見える。デイビッドの身体には、彼と関わった人たちが映し出される。
デイビッドを構成している人が映し出されるということが、デイビッドであるという証拠。ならば希望と絶望の街・ナイトシティを身体に映し出すこの人物は、ナイトシティそのもので、デイビッド・マルティネスはナイトシティそのものに殺されたということでしょう。
本編では、アダム・スマッシャーとの戦いで命を落としたデイビッド。
しかし、本質の話をするならば、貧困と母親の死で「サンデヴィスタン」を取り入れるしか生きる道がなかったデイビッドをここまで追い込んだのは
ナイトシティという街、環境のせいであるということをこのオープニングは示唆している。
90秒という短さ、スマートな映像の中にこれでもかというほど本編への手がかりが散りばめられていて、脱帽……という感じです。
アニメ制作を担当したTRIGGERはキルラキルや宇宙パトロールルル子など、コミカルでなんかよくわからんけど凄いカッコいい映像を作る会社という印象があったので、これはああいう意味なんじゃないのか?と思わせるオープニング映像が出てきて驚きました。
『エッジランナーズ』の続編はないだろうけど、似たような作品は今後も作ってほしいですね。
記事なりで引用した和訳は以下のサイトページから。
記事内で使用した画像「カッコ良すぎるオープングタイトル | サイバーパンク: エッジランナーズ | Netflix Japan」より
終
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