お話5 キノコ友達
これは私が16歳頃のおはなしです。
当時、私は、ほとんど通えなかった高校を、なんとか(病院の診断書により)卒業し
進学はせず、家での療養生活を送っていました。
今思い出せば、あの頃はちっともさみしくなく、毎日がワクワクの連続でした。
なぜかって、大嫌いな学校に行かずに、毎日好きなことができたのですから!
当時、私がしていたことと言えば
読書、写真、ギター、お絵かき、、、今とほとんど変わりません。
めいっぱい、夢中になって本を読んでは、物語の主人公に思いを馳せて、一週間、悲しみに涙し
思いのままに絵を描いては、そのままバタッとベッドの上に倒れ込み
ご近所を気にすることなく、猛烈にギターの練習をし
フィルムカメラを持って、家の近くを、夢中になって写真を撮っては、途中で具合が悪くなったり、ほんの10分の距離でも、帰ってこられなくなったりしました。
それでも、カメラ越しの夕日のあまりの美しさに、涙していました。
そしてまた一週間寝込む。
そんなことを繰り返しながら、とても楽しく、けして一人ぼっちとは感じない毎日でした。
とっても具合が悪かったのに、とっても幸せな日々でした。
ある日、いつものように、カメラを持ってお散歩していると
グラウンドの茂みに、白いキノコが生えているのを見つけました。
「キノコだ!!!!!」
その日私は、年賀状用の写真を撮っていまして
丑年でしたので、小さな牛の置物をいろんなところに置いては、写真を撮っていました。すかさず私は、白いキノコの上に、小さな牛を座らせました。
地面に寝そべって、周りを気にすることなく、夢中で牛とキノコを撮っていたところ
「なにを撮っているの?」
と、犬の散歩をしていた、おじさんに声をかけられました。
「キノコ撮ってるんです。ほら、ここに生えているの!」
牛の置物を置いて、撮っていることを説明すると
同じくカメラが趣味だった、そのおじさんも、
「年賀状用の写真にしたい、そしてそれを交換しよう」
という話になりました。
その年は、牛の乗った白いキノコの、お揃いの写真が載った年賀状を
ふたりで交換したのでした。
おじさんとは、そのあとも、仲良く交流がありましたが
私がもう少し大きくなって、すっかり会わなくなった頃に、亡くなっていることを知りました。
思い返すと、おじさんは、笑顔の爽やかな、キラキラ輝く瞳を持った、若い青年のようなお方でした。
小さな私とお友達になってくれた、とても心の優しいお方でした。
今日は、そんな、私の自由すぎる、思い出のお散歩のお話でした。
お読みくださり、ありがとうございました
kasumi 🍄
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?