見出し画像

町内会の「デメリット」と、そのデメリットがもたらすリスクをどうヘッジするのかという話が必要だよねという話。

 『令和・アフターコロナの自治会・町内運営ガイドブック』読みました。なんと言ってもこのタイミングで最も欲しがられる内容を速攻で出版できたことが大したもんだなと思います。

 疫病を含む災害への対策において、町内会などの地域活動への期待は大きいです。その考え方と具体的な事例がわかりやすく整理されていて、参考になります。

 一方で、この手の本を読んでいていつも思うのが、突き詰めれば「やり方」の問題ではなくて「関係性」の問題なんだなと。

 というのも、どんなに優れた活動をしても、その活動をユーザーが買わなければ効果が出ないからです。ここでいう「買う」っていうのは、例えば町内会に加入してお金を払う、というようなことも含みます。

 じゃあいくつかの地域で、地域活動を、ユーザーが「買わない」のはなぜか。これは普通の商品と同じで、「商品ないし作り手と、ユーザーとの間に信頼関係がない」ってことで。逆に言えば、これさえあれば、多少拙い活動でも別に構わないわけです。

 じゃあなんで地域活動のプロバイダーはユーザーに信用されないかっていうと、理由はいくつかあるけど、こと新自由主義の価値観を内面化している人々からすれば、おそらくは「ボランティアでやっているから」って回答になるんですよね。ボランティアがボランティアであるということ、営利目的でやっているわけではないということって、担い手としては自負のあるところのはずで、それを考えると、なんとも皮肉なことではあります。

 翻れば、僕らは営利事業でやっている方を信用できてしまうんですね。というのも、営利事業では、ユーザーはプロバイダーの経済的成功を「人質に取ることができる」からです。これ、珍説に聞こえるかもしれませんが、信用を得る方法としてはむしろ伝統的で、例えば江戸時代に、敵対国の統治者の親族を婚姻という形で抱え込んで人質にすることで、相互安全保障をはかっていたのと同じで。

 例えば、コンビニで僕らは誰が作ったのかもわからないパンを買い、平気で口にしていますけど、なぜそこでコンビニを信じられるかというと、もしそこでパンが腐っていたら、経営が成り立たなくなるからです。つまり、生殺与奪権をユーザーが握っている。なので、コンビニを信用できる。

 翻れば、ボランティア原則の地域活動は、人質に取れる物が少ないんです。これが、地元経済を支える名士とかだと、地元住民の評判が商売の根幹になるわけだから、まさか俺たちを裏切らないだろう、という予測が立つ。これが信頼なわけです。

 そこの人質部分をなくすと何が残るかって言うと、「善意」になってしまう。人質に比べると弱いんですよね。

 都市部では人間関係のしがらみが弱い。なぜなら、そもそもお互いのことをよく知らないからで、しがらみが弱いということは、人質に取れる要素がないということで。例えばアメリカのBIDなんかだと、地域団体は、住民税に上乗せして課税した分を活動費用として徴収することができるが、その分の利益を与えられないと、裁判になり、保障を要求されてしまう。こういう人質のとり方を制度上していると聞いた覚えがあります。

 地域団体が多少お金をちょろまかしたところで、せいぜい周囲の住民から悪口を言われるか、脱会者が出る程度で、そもそもそこに資本を持っていない人が担い手である場合、失うものがないんですよ。

ここから先は

1,388字
まちづくり絡みの記事をまとめたマガジン「読むまちづくり」。 月額課金ではなく、買い切りです。なので、一度購入すると、過去アップされたものも、これからアップされる未来のものも、全部読めるのでお得です。

まちづくり絡みの話をまとめています。随時更新。

サポートされると小躍りするくらい嬉しいです。