僕らは暴力から自由になれるのか − 山極寿一『暴力はどこからきたか−人間性の起源を探る』NHK出版、2007
本書は、性と食をめぐる争いを人類がどう回避してきたかということを、ゴリラを始めとする霊長類研究者の観点から考察するものである。
狩猟採集民の研究から、彼らには共通して採集した資源を「分け与える」のではなく「分かち合う」事を重視する「共在のイデオロギー」が在ることがわかっている。誰が獲得してきたものであれ、キャンプをともにする人々に等しく分け与えられ、所有は徹底的に避けられる。竹内潔は、彼らが食物を直接手渡ししないことを記述している。肉は「放り投げられる」のである。黒田末寿は、所有は分配を介して群れの関係を破壊する危険をはらんでおり、だからこそ群れを守るために、食物を政治的な手段にすることを自らに禁じたのだ、という(PP213−215)。
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