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SF短編小説「政治家たちの学習」

 政治家の街頭演説がうるさい。夜遅くまで仕事をして、やっとのことで眠ることができたと思った途端、朝早くから誰に対してともわからぬ演説で無理やり起こされた経験があるならば、一度はこの言葉を脳内で再生したことがあるだろう。あなたもその一人ではないだろうか。

 とすると、おそらくあなたも「街頭演説で一度でも名前を聞いた候補は投票先から外す」というアイデアを一度は思いついたことがあるだろう。人々がその指針を維持するならば、街頭演説をする候補には票が集まらないという淘汰圧が働き、結果として街頭演説をしない候補だけが生き残っていくことになるはずだ。これは一見合理的な説明に見える。

 近未来。選挙戦もビッグデータの時代になり、政治家の行動や発言と人々の投票行動の因果関係が明らかになっていた。その中には、政治家たちの直感に反する結果も含まれていた。それは「どうやら人々は街頭演説をしない候補に票を入れるらしい」ということであった。特に京都のとある選挙区ではその傾向が強く、このことを明らかにした選挙コンサルタントは、この知見を若き改革路線の政治家に売り込んだ。彼は、このコンサルタントと協業し京都の市議選で異例の勝利を収めた。

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