今度こそ、夢を背中に括りつけて
私は、スタートラインに立つことができました。
来年の4月から、私は美術館の学芸員になります。
まだ夢を見ているみたいで、たくさんの想いが溢れてきて、うまく言葉にできません。何度も涙がこみあげてきます。
ふわふわと、落ち着かなくて。
うれしい気持ちも、つらかった記憶も、安堵も不安も、綯い交ぜになっています。
でも、今のこの気持ちを忘れないようにするために、そして夢を応援してくださっていたみなさんに感謝を伝えたくて、noteを書くことにしました。
来年から勤めることになる美術館は、企画展の内容も、コレクションの内容や展示の仕方も、教育普及活動も、どれをとっても、いいなと思うところがたくさんある美術館。
ここで働きたい、と心から思える美術館です。
そんな美術館で学芸員として働けるというのは、とてもうれしいことです。
でも、それはゴールではなく、冒頭で言っているとおり、スタートにすぎません。
「夢って、叶っただけじゃだめなんだ。
離れないように、背中に括りつけて、歩きつづけなきゃなんない。」
スナックキズツキのママが、そう言っていました。
私には、その言葉の意味が、痛いほどわかります。
私は、新卒で学芸員になって、夢が叶ったと思っていました。
でも、私は、その夢を途中でおろしてしまいました。
夢って、叶えただけじゃダメなんだ。
ほんとうに、そのとおりだと思います。
夢を背負いきれなくなって、私は夢をおろしてしまいました。
そのことをずっと悔やんでいました。
私は夢をおろしたあとに、どう歩いていいのかわからなくなって。
絶望の淵で、夢だけじゃなく、生きることさえも諦めてしまいたくなったこともありました。
夢をおろした私には、何も残りませんでした。
肩書のない私にはなんの力もなく、経験と言えるほどのものも残らなかった。
でも、何も持たない私のことを見捨てずに、諦めずに、手を差し伸べてくれる人たちがいました。
私は、自分の進む先が見えなくて、不安で仕方がありませんでした。
けれど、私の周りの人たちは、少しも心配そうな顔をせずに、
「ももちゃんなら、大丈夫」と言ってくれました。
きっと心の中では不安に思っていたはずなのに、そんな不安を私に感じさせないように、そばで笑ってくれていました。
私の手元に残った一筋の糸を辿るように、私は歩き始めました。
恩師に連絡して、もう一度大学院で学び直したいと伝えました。
「学び直し」そう言うとかっこよく聞こえますが、あのときの私にはそれしかできることがなかったのです。
私は、必死に学びました。
不安でどうにかなってしまいそうなときは、まわりの人たちの「大丈夫」の言葉をお守りにして。
学びつづけているうちに、少しずつ過去の傷も癒えてゆき、自身の非をようやく心から認められました。
過去に迷惑をかけてしまったという事実を変えることはできません。
でも、今の私は、過去の私とは違うと、自信を持って言えます。
ずっと、必死に学んできた。たくさんの人にいろんなことを教えてもらった。
過去の事実を変えることができなくとも、これから私の努力次第で、誰かをしあわせにすることはできるはず。そう思うのです。
夢をおろしたとき、私の手元には何も残っていないと思い込んでいましたが、私の胸の内に、まだ夢の灯火が燻っていることに気づきました。
私は、もう一度夢を背負えるだろうか。
そう自問しつづけました。
いまも、自身に問うています。
学芸員の採用試験の倍率はたいてい数十倍。
今回もそうでした。
私と同じ夢を背負いたい人はたくさんいます。
私の背負おうとしている夢は、私一人の夢じゃない。
たくさんの人の想いを私は背負わなければいけません。
とても、重い夢です。
でも、今度こそ、背中に括りつけて、歩きつづけるんだ、と決意しました。
美術作品と人をつなぐ、作品をとおして人と人とをつなぐ。
過去から未来への預かりものを継承する。
声なき声、小さな声に耳を澄ます。
作者の想い、時代の心を伝える。
答えのない問いに挑む力を育む。
これが、私の背負う夢です。
重くて、大きな夢。
でも、そんな重さに押し潰されることなく、しなやかに健やかに、一歩ずつ進んでいきたいと思っています。
夢は背負う、だけど、気負いすぎずに、私にできることを確実にやっていきます。
これらの言葉が空虚なものではなく、ちゃんと血の通った言葉だと感じられるように、私はこれからも学びつづけたいし、努力しつづけたい。
私自身が学芸員になってよかったと思えるように、というよりも、「この人が学芸員でよかった」とみんなから思ってもらえるような学芸員になるのが、私の理想です。
たくさんの人が手を差し伸べてくれたから、私は今生きています。
今度は、私が社会に対して手を差し伸べる番です。
私が自分の夢と向き合っているとき、私には何の力もないと嘆く私に、noteで、たくさんの方が宝物のような言葉たちを贈ってくださりました。
なんの自信も持てなかった私に、もう一度夢へと向かう勇気をくれたのは、noteで出会った人たちです。
改めて、いつもnoteでお世話になっている皆様に御礼申し上げます。
こうしてスタートラインに立てたのも、皆様のおかげです。
いつも本当にありがとうございます。
専門分野外の募集だったこともあって、勉強したいことが山積しています。
なので、noteの更新はこれまでよりも遅々としたペースになると思いますが、これからもnoteを書きつづけます。
夢を背負って歩きつづける姿をお見せできるように、みなさんの声に耳を傾けるために、そして、ときにはふうと息抜きをするように、noteに立ち寄りたいと思います。
これからも、どうぞよろしくお願いします。