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コーヒーとヴェネツィア

わたしは、コーヒーやストレートの紅茶を飲むと、少しふわっとした気分になる。

お酒にはあまり酔わないのだけれど、コーヒーや紅茶にはすこし酔うみたいだ。

でも、たまにコーヒーや紅茶も飲みたくなる。

ヴェネツィアに住んでいたとき、イタリアはコーヒーのおいしい国だったから、飲まないと損をしているような気持ちになった。
おいしいお菓子やさんには、小さな飲食スペースがついていた。
ヴェネツィアは、小さな島なのに、ぎっしりと建物が並んでいて、どのお店も狭かった。
それなのに、おいしいお菓子やさんにはいつもたくさんの人がいた。
優雅にコーヒーを飲む余裕はなく、みんな立ち食いだ。
日本のように整列なんて誰もしないから、叫んで注文する。
注文したものが出されたら、押し流されるように、店の奥へと向かって、お菓子を頬張り、コーヒーを流し込む。
わたしはいつもカプチーノを頼んでいた。
ふわふわの泡がたっぷりとのった、カプチーノは口にするたびしあわせな気持ちになった。

今年、ヴェネツィアで出会った紳士と久しぶりに会った。
わたしが、留学していたとき、その方も研究者としてヴェネツィアに滞在していた。
その方は、今は神戸に住んでいて、今年こちらへ遊びにくるついでに会うことになった。
その方がこちらへ来る前、「お土産にコーヒー豆を持っていきます、豆は挽きますか」と尋ねてくれた。
コーヒーミルはわが家にないので、挽いてくださいとこたえたのだが、その方はコーヒー豆と一緒にコーヒーミルもプレゼントしてくれた。

それ以来、わが家では、挽きたてのコーヒーを飲めるようになった。
挽きたての豆は、とても芳醇な香りがして、部屋の中がコーヒーの香りに満たされる。
休みの日の朝のコーヒーを飲む時間が、楽しみになった。 休みの日しか飲めないのが、悔しいほどに。

わたしにとって、コーヒーとヴェネツィアはきってもきれない関係にある。
だから、コーヒーを買うときは、ついイタリアンブレンドに手を伸ばしてしまう。
イタリアかぶれと思われるかもしれないけど、やっぱりイタリアンコーヒーは、甘みとコクがあっておいしいと思う。