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ノンマリ連載短編小説 「夢語部(ゆめかたりぶ)」 #1 林檎の娘


第一夢
『林檎の娘』

柔らかな風が吹く草原で、林檎の娘という少女が立っている。彼女は名の通り、林檎の木から生まれた子だ。林檎の娘には決められた仕事がある。午前5時の朝露を受けながら、リクエストされた歌を一曲歌うのである。

人々のリクエストは、草原の風経由で彼女の元へ届く。その日一番に届いた曲が選ばれて歌われる。林檎の娘の歌声は甘い香りに変化する。そう、林檎だ。娘の歌声が林檎に新鮮な風味を与えているらしい。

今年の林檎の娘は歌うことが好きらしく、今までの年より随分と甘い林檎が実った。まるで恋をしているかのような味だ。私がそう呟けば、林檎の娘はくすくすと笑って「当たり前よ」と答える。

「私に恋をするから、林檎が甘い香りを纏うの。結婚式のドレスみたいなものだわ」

林檎の娘の言葉に、私はウェディングドレスを纏った、美しい林檎の空想をした。


作:白旗ラメント

★一話先行公開中★
第二夢『マシュマロ賛歌』
https://nonmari.jp/series/s001102/


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