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ノンマリ連載短編小説 「龍のコインが来て、そして」 #12 冒険の終わりはウサギ

12.
『冒険の終わりはウサギ』


チョッキを着て、懐中時計を持って急いでいる人がいたので、追いかけて、地下鉄に乗った。これって、『不思議の国のアリス』のウサギだよね、と思いながら。いままでのわたしならやらなかったこと。

見失ってしまったので、適当な駅でおりたら、ベンチになくしたブローチが置かれていた。ああ、これで不思議な出来事もひとまずおしまいなんだと直感的に思った。

私は、途中から気づいてしまった。すべては龍のコインが連れて来た出来事なのだ。コインが寝返りをうったときからはじまったから、また裏返らないうちに、つまり、十二支でいえば龍の前、ウサギのエピソードが終わったときには、次の人に渡すべきなのだ。
 
私は次に渡す人を決めた。そして、その人の財布の小銭入れに、コインを放りこんだ。もしあなたが、財布の中に龍の絵がかかれた明治30年の50銭硬貨をみつけたならば、それは、私が持っていた不思議な龍のコインかもしれないよ。
 

—了

龍のコインが来て、そして / 中臣モカマタリ
龍の模様が刻まれたコインを手に入れた「私」に起こる、ささいだけれど不思議なできごとをオムニバス形式でつづる連作。


「nonmari(ノンマリ)」

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