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その間、わずか3秒!
今日も今日とて朝の通勤。
お盆も過ぎて少しは涼しくなった。プールや海もそろそろお終いの頃合いか。水難事故にも要注意な頃合いだ。通勤は相変わらずダルい。
あっ猫。
野良の”例に漏れない”白黒で尻尾の短い猫が、人家と道路の境界にいてこっちを見ている。
はッ…! ピキピキピキーン。
「こっちに来てごらん」
「ま、待って」
戸惑う私の一歩を、紳士な猫は優しく見てくれている。
「そう、怖くないよ」
2歩目を歩くと紳士も歩き出す。
「上手だね」
3歩目、4歩目と、優しく手を取ってくれる紳士がいよいよ宙を舞う。
「しっかり掴まっているんだよ」
ああ、素敵な扉が開かれそう!このまま、素敵な異世界の住人が私を迎えてくれる!
「あら、人間とは珍しいわ。何年ぶりかしら」
暖かく迎え入れてくれる人たち…この街で私はやっていけそう…。
でもね、
「でも待ってね」
最後の一歩を私は踏みとどめた。今はまだ行けない。やることがある私には。
私は看護師。私を頼りにしてくれる人はいるんだ。
でも、せめて、それならせめて食パンを咥える素敵な人と出会わないものだろうか。せめてこう、曲がり角の出会い頭に”ごっつん”とね。
曲がり角一つない、駅まで一直線な朝の通勤でした。
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