糸【夫婦のこと】
「今、ちょっとだけいい?」
休日、リビングでくつろいでいると妻が私を呼びます。このタイミングでの呼び出しは、いつも糸です。ミシンが趣味の妻、縫う糸に悩むと必ずお呼びが掛かります。布に合う糸の相談。いつも候補は二つの糸にまで絞られており、布の上に左右並び置いては、自分では決め切れなくなって私に声が掛かります。
「どっちの糸が合うと思う?」
この相談に対しては私は真剣に向き合うと決めています。読書中でも動画を観ていても一旦中断しては必ず糸を選びに行きます。なんなら作る物まで聞いて仕上がりを想像しては一生懸命に考えて糸を選びます。
「左かな。」
「よかったー、私も左の糸なの。ありがとう。」
これが理想のパターン。意見が合うことで満足し妻は作業に戻り、私はくつろぎ直します。
「左かな。」
「えぇー、私は右の糸なんだけど… 左の方がいい?」
こうなるとしばらくは意見のすり合わせですが、最終的には自分の選んだ糸で妻は作業に戻り、私はくつろぎ直します。正直に言えば私はどちらの糸でもいいんです、妻さえ満足してくれれば。でも、そのためにはおざなりの対応ではいけません。ちゃんと考えてしっかり選んでこそ妻の満足が得られるものだと思っています。妻にとっては糸の選択ですが、私にとっては将来の選択です。休日のリビングで邪魔者扱いされるような未来は困ります。いつまでも妻から趣味の相談をされる夫でありたい。
右の糸はあなた
横の糸はわたし
合うべき糸が
違えることも
僕はしあわせと呼びます
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