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震災から10年(2)その日の夜

小さな画面から上下に激しく揺れる漁船が見える

画面を見た直後、父や母に電話をかける。

当然その時にはもう電話なんか繋がるはずがない。

お邪魔していた研究室では、慌ただしく地震で倒れた物の片付けや、冷凍庫の保護作業を始めたので、早々に挨拶をし帰路についた。


頭の中で漁船の映像が何度も再生される。

まぁ大丈夫だろうと思いつつも、モヤモヤしたものが取れずにいた。

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帰り途中、町中の信号は全て作動しておらず、所々渋滞になっていた。
うまく切り抜けたが、今度は高速道路が通行止めになっていた。

乾いた雪がちりちり降り始める。

街灯がない山間の道は車のライト以外闇が続き、段々と心細くなっていった。

途中、かろうじて開いているコンビニで食料や飲み物、チョコなど日持ちしそうなお菓子を購入。
その時はまだパニックにはなっていなかった。

大学のある町まで帰るのに4時間以上かかった気がする。(高速道路を使うと大体2時間くらい)

時間が経つにつれ、コンビニやスーパーでの買いだめがすでに始まっていた。

その様子を横目で見つつ車を走らせる。

地方の町でさえ、町中が真っ暗で、人が歩いていても見えず、危険な状態だったと思う。
今考えると都会はもっと危険だっただろうな。


ようやく大学に帰ってくると、当然実験室の備品も散乱しており、その日はとりあえず解散した。

1人では心細かったので、学生何人か集まって、1人の家でみんなで寝た。

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