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ひとり芝居テキスト「魔女の証言 失った色」

2013/11月上演「魔女たちのエチュード」 【第2幕第七場 魔女の証言 失った色】より 私は西の国に住んでいた。 青い空と、白い雲と、緑に輝く木々。 この世界はどこまでも続いていると思った。 でも、あの光が放たれた時から、世界は変わった。 私が気付いた時、世界は色を失っていた。 青と白と緑の世界はどこにもなかった。 黒と灰色と赤の世界だった。 真っ黒な炭と化した建物や人、 昼間なのに太陽の光が届かない灰が舞い、 その中で肉と血の固まりが蠢き、 炎がその赤色を一層が際立たせ

    • ひとり芝居テキスト「つきものがたり:プロローグ」

      まもなく夜になります。 私はこの街の夜は嫌いです。 太陽の光は消えたというのに、 街にはまぶしいばかりの光があふれています。 まるで夜になるのが嫌だといわんばかりに。 人々はその光の中で照らされ 昼にはみせたことのない顔を見せます。 それは、あたかも 夜になれば、 モンスターが墓場からよみがえるように。 ただモンスターたちが襲うのは 善良なる市民でも、穢れを知らぬ少女でもなく、 自分たちと同じモンスターたち。 こんなに世界は光にあふれているのに お互い正体が見えず、おび

      • ひとり芝居テキスト「ハロウィンの魔女」

        ~ハロウィンの魔女~ むかしむかし 人里離れた森の奥に、一人の老婆が住んでいた。 彼女が子供の頃は、街で両親と暮らしていた。 しかし、父親が病気で亡くなり、母ひとりの手で育てられた。 そのため貧しい生活を強いられ、また街の人々の目も冷たかった。 ハロウィンの祭りで、お菓子をもらいにいっても、 乞食扱いされ、お菓子をもらうどころか、追い払われた。 ある日、街に疫病が流行った。 父親が亡くなった病気だった。 街の人々は母を魔女と呼び、石をぶつけ、火あぶりで処刑した。 炎に焼かれ

        • ひとり芝居テキスト「月を追いかける男」

          むかしむかし あるところに わかものがいました 彼は毎晩 夜空にのぼる 月をみつめていました 彼は月に行ってみたいと思いました。 そこで、彼はこの村の長老に、月を追いかけるため、村を出ることを告げました。 長老は、彼が月を追いかけることをやめさせようと説得しました。 しかし、どんなに言葉を重ねても、 彼の月に行きたい気持ちを抑えることはできませんでした。 彼は村を出ました。 彼は月を目指して進みました。 月がのぼり、沈むまで、彼は走り続けました。 彼がどんなに

        ひとり芝居テキスト「魔女の証言 失った色」

          ひとり芝居テキスト「月に行きたかった男」

          男(語り部) 舞台に 現れる 目に見えない絵本を開き、語り始める これは 月に行きたかった男の お話です 彼がまだ、子供だった頃、 彼は毎日 月を見つめていました。 月にむかって、いっぱい手を伸ばしました。 でも、月には届きませんでした。 何度となく、手を伸ばしましたが 月に届くことはありませんでした。 そうして、いくつかの昼と夜が 過ぎていきました。 ある夜のこと 彼は 近くの山に登りました。 山の上にのぼって、彼は力いっぱいジャンプしました ジャンプする 語り部

          ひとり芝居テキスト「月に行きたかった男」

          ひとり芝居テキスト「石鬼」

          第一幕 邂逅 ・明かりつくと、舞台中央に全身に布にくるまれ、 異形の鬼の仮面をつけた男が座っている。 彼は眠っているかのようにじっとしている。 しばらくして、彼はうなり声をあげる。はじめは低く、やがて大きく。 どうやら、彼は目覚めたらしい どれくらい眠ったのだろう? いつから眠ったのだ?何もかも 忘れてしまいそうだ そうか、あの神サマの馬鹿やろうが、この岩山に俺をとじこめやがって…もうずっと昔の話だ…… 今ではこの岩山が、俺の身体そのものだやつのことを考える気もしね

          ひとり芝居テキスト「石鬼」