ひとり芝居テキスト「魔女の証言 失った色」

2013/11月上演「魔女たちのエチュード」
【第2幕第七場 魔女の証言 失った色】より

私は西の国に住んでいた。
青い空と、白い雲と、緑に輝く木々。
この世界はどこまでも続いていると思った。
でも、あの光が放たれた時から、世界は変わった。
私が気付いた時、世界は色を失っていた。
青と白と緑の世界はどこにもなかった。
黒と灰色と赤の世界だった。
真っ黒な炭と化した建物や人、
昼間なのに太陽の光が届かない灰が舞い、
その中で肉と血の固まりが蠢き、
炎がその赤色を一層が際立たせていた。。
かつて人間であったものが山積みとなり、
私はその中に埋まっていた。
私はその山の中から這い出ようとし、
手足を動かすごとに、うめき声が聴こえる。
黒と灰色と赤で彩られた世界の中、
私は生きながらに地獄にいた。
ようやくそこから抜け出した私は、
それでも地獄からは逃れられなかった。
どこに行っても冷たい眼と、罵りの声。
醜い顔  穢れた血、
お前の周りには死の影がつきまとう
お前の産む子供は異形をなす
寄るな、近づくな、死の病がうつる
私は人間なのに・・・
人間であることが認められない。
あなたと同じ人間なの・・・
あなたと同じ世界には居てはならないらしい
きっとこの夜が明けたら、
青い空と、白い雲と、緑の木々が迎えてくれる。
美しい世界がずっと続いているだろう。
そう願うことしか、私はできない。

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