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『かっこうの親もずの子ども』(椰月美智子 実業之日本社



『かっこうの親もずの子ども』(椰月美智子・実業之日本社)読了。

ここにいるのは、私だ。

生々しく、まるで小説を読んだ気がしない。

子育て小説というよりは、子どもという命を取り巻く物語だと思った。

幼児誌の編集部で働くシングルマザーが主人公。彼女には不妊治療の末産んだ息子がいる。夫の希望もあって出産したが、離婚した。そんな親子。

一人として同じ思いを抱く親はいない。

みんなそれぞれの苦しみと喜びを抱いて、側にある生きものを見つめている。

ママがよんだから、ママのところにきたんだよと、言われたら。私はきっと顔をゆがめて、ゆがめた顔を見せないように、抱きしめるだろう。

読まないほうがいいと言った方が、何を思ってくださったのか。

読んだほうがいいと言った方が、何を思ってくださったのか。

私はかっこうなのか、もずなのか。これからずっと、自分を試し続けるのか。

わからない。

でもきっと、いつか、誰かにすすめる日がくるのか。

わからない。

単純にいい作品、と言えない。人にすすめるには勇気のいる作品だ。

子どもを持つ親の気持ちがあまりに赤裸々で、見たくないものをなぞらされた気がする。それが暴かれるべきものなのか、見ないままでよいものなのか、私には判断がつかない。


「だからあなたにはすすめなかったのに」と尊敬する方はおっしゃった。あなたは私が傷つくとわかっておられた。私が見ようとしない、見たくないと思っている部分が描かれていると、あなたはわかっていらっしゃった。

小説は怖い。こんなにも人間を露にするなんて、怖い。


(2012年10月20日)
『かっこうの親もずの子ども』(椰月美智子 実業之日本社)

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