訳詞:The Beatles「Within You, Without You」
ビートルズの「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」のアナログ盤ではB面の1曲目に入っているのが、このアルバム唯一のジョージ作、「Within You, Without You」である。レコードを実際に聴く人なら誰でも知っていることだが、外周から内周に向かって渦巻き状に溝が掘られ、一定の速度で回るレコードの構造上、最外周に位置するAB面の1曲目は音の記録に一番長い距離が取れるので、音質も一番良い。だからアーティストは、良い音で聴いてほしい自信作を各面の1曲目に入れるという。もちろん「Within You, Without You」も間違いなくそういう作品である。そのことを知らないのか何なのか、これがB面の最初に入っているのは、インド音楽を聴くのが面倒なリスナーがこの曲を飛ばしやすくするためだ、などというナンセンスな説をどこぞで見かけた。ビートルズは4人のメンバー間のバランスが命なのだと知らない人が多すぎる。「Sgt.~」にこの曲がなければジョージ度ほぼゼロじゃないか。ビートルズはジョンとポールだけいればいいのか。そんなわけはなかろう。そんなことを言う人にはここで、インド音楽をBGMに激辛スパイシーな料理を週に一度は食べなければ全身が震え出す呪いをかけよう。
冗談はさておき、自分もこの曲の歌詞についてはあまりしっかりと読んだことがなかったので、訳詞を試みることにした。曲調からしてインド哲学書を読まなければ理解できないような難しいことが書いてあるのではないか、と思われるかもしれないが、ジョージはビートルズファンなら誰にでもわかるように平易な言葉でこの世界の真実を説いてくれている。訳すのもまったく難しいことではなかった。私利私欲でなく、ミサイルや爆弾でもなく、愛をもってすれば世界は救われる。それなのに、それを知らない人が多すぎる。
2006年、ビートルズの楽曲をマッシュアップして新たな命を吹き込んだ「Love」に収録された、「Within You, Without You」と「Tomorrow Never Knows」の融合。まるで現代のロックバンドによるセンス抜群のカバーのようになっていて、アルバム全体の中でも出色の格好良さだった。