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不気味な女の子

大学生の頃の話。
引っ越したばかりで部屋には布団とノートパソコンくらいしかなく、その日は部屋の中心に布団を敷いて寝ることにした。

何も無い部屋で天井を見つめていると、ふと「部屋の中心に寝転がって天井の四隅を順に見ると幽霊が見える」という話を聞いたのを思い出した。
時計回りに見るのか反時計回りに見るのかもうろ覚えだったが、なんとなく天井の四隅を視線だけでキョロキョロと適当な順に見ていた。

いつの間にか寝てしまったらしく、気付くと夢の中にいた。
広い公園のような原っぱを3歳から5歳くらいの子どもたちと一緒に歩いていた。
どうやら夢の中で自分は保育士のようで、近くには同僚らしき女性もいる。
はしゃぎ回る子供たちを見守っていると、少し離れたところからこちらを見ている子に気付いた。

髪はおかっぱより少し長いミディアムヘアで、俯いていてよく顔は見えない。赤っぽい着物のような服を着ているが全体的に汚れて見える。何よりその子の周りだけ空気が暗い。

内心関わりたくないと思ったが、同僚女性が「あの子も仲間に入れてあげないとかわいそう」と言うので嫌々ながらその子に近付いた。
近付いてもやはり顔はよく見えない。
声を掛けてみるが返事がない。
しばらく反応を待ってみたが微動だにしない。
諦めて他の子どもたちの元へ戻ろうかと思った時、その子がゆっくりと顔をあげ―――

と、いうところで目が覚めた。
身体が動かない、というよりは緊張で動けない。
枕元に誰かが立っている気配を強烈に感じる。

『さっきの子だ』

何故か確信があった。
見たらいけない気がして必死に寝たフリをするが、心臓の鼓動はどんどん大きくなる。
女の子が顔を覗き込もうとする気配も感じる。

しばらく寝たフリを続けていると、今度は突然「ドタドタドタ」と足音が聞こえ出した。
振動から察するに女の子が布団の周りを走っている。
たまに布団の上も走っているのか、布団の端が沈み込むのを感じる。

反時計回りに走っていたかと思えば方向転換して時計回りに走り出し、また何周かすると逆向きに走り出す。

どうすればいいのか分からず、ひたすら寝たフリをしながら知ってるお経を脳内で唱えて消えるのを待った。

どのくらい時間が経ったのか。
気付くと女の子の気配は消えていた。
外も明るくなり、雀の鳴き声が聞こえる。

先程までの出来事は全て夢だったのではないか?
布団の周りを見渡しても、怖い話によくある「足跡が残っていた」「自分のとは違う髪の毛が落ちていた」なんてことはなく、キレイなフローリングに自分の髪の毛が数本落ちているだけだった。

でもそれ以来布団は壁際に敷くようになった。

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