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妖精との文通

中学時代オカルトや不思議体験を読むのにハマっていた。(今もだが)
あるときネットで「妖精と会話する方法」なるものを見つけた。

『妖精は至る所にいます。でも恥ずかしがり屋さんなのでなかなか人間には姿を見せてくれません。ですがお手紙を書いておけば返事が帰ってくることがあります。やり方を教えますね。

まず5センチ四方の小さな紙を用意します。妖精は小さいですから。手紙にはこちらの名前と簡単なあいさつ、返事が欲しい旨を書きます。書き終えたら折り畳み、家の中の誰にも見つからない場所に隠します。妖精は光り物や綺麗なものが好きなので、あればアクセサリーなどを添えましょう。あとは返事を待つだけです。ただし、この手紙のことは他言してはいけません。もちろん返事があった場合もです。妖精は自分たちの存在が人に知れることをよく思っていません。もし話してしまったら妖精と交流するチャンスは永遠に失われます』

だいぶ昔のことなので記憶が曖昧な部分もあるが、概ねこのようなことが書いてあった。

もちろんアホだったので早速手紙を用意した。
自己紹介をしつつ、妖精が本当にいるのか知りたいとかよかったら返事が欲しいとか書いた気がする。

手紙は自室のローテーブルの下のプリンタの隙間に隠した。当時は祖父母と3人で住んでたので、機械類に疎い祖父母がここを触ることはないと思ったから。
安物ではあるが、持っていたネックレスも添えた。

夜のうちに用意したのでワクワクしながら寝て、翌日まだ手紙があることを確認して学校へ行った。

ここがまたアホなんだが、学校でうっかり妖精の手紙の話をしてしまった。同じような趣味の友達もいたので話の流れでつい昨日妖精と会話する方法ってのを見つけて実験中だと話してしまった。
話してから「しまった!」と思ったが、家にいるはずの妖精が学校まで着いてきて自分を監視してるはずがないと開き直った。

待ちに待った下校時間。
寄り道もせずに真っ直ぐ帰宅。
2階の自室にたどり着いてすぐさま手紙を確認した。



ない


手紙がなくなっていた。ネックレスも見当たらない。
上手くいったのか?返事を待てばいいのか?

それから1週間は手紙を隠していた近辺を毎日確認していたが、結局返事は来なかった。

妖精なんていなかった。
手紙も祖母が部屋の掃除の時に見つけて処分したんだろう。

と、納得したいところなんだが祖母からは手紙やネックレスについて一切触れられなかった。
それに手紙なら小さい紙だしゴミだと思って捨てるかもしれないが、ネックレスを捨てるだろうか?
いつ掃除したのかも気になる。
祖母はいつも私を見送ったらすぐ仕事に出掛ける。
帰宅も私より祖母が遅い。
じゃあ祖父が?だが祖父は2階にあがってくることすら滅多にないし、私の部屋に入ることもない。

「妖精と文通しようとしていた」なんて恥ずかしくて言えないので、結局祖母に確認できないまま大人になってしまった。

私が妖精のことを話してしまったから、手紙とネックレスだけ頂戴して返事をくれなかったのかもしれない。
そういうことにしておいた方が、夢があっていいよね。

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