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ひとつだけ

仕事終わりの帰り道。
時々開いているパン屋さん。
開いてたら絶対行く。
どれを選んでもとてもおいしい。
こんなに買って食べきれるだろうか?
と、思いつつ。
気がつけばあっという間に食べきってしまっている。
何度か同じ時間に行くと女店主に顔を覚えてもらって、パンを選んでいる時もなんとなく話すようになった。
きびきびと店内を動き回る女店主は呪いではなく、鈍いにかかったようにじっくりパンを選ぶ自分に絶妙なタイミングでパンの特徴を教えてくれる。
会計の時、とてつもなく早いスピードで古いレジを手打ちしている間に、現金とエコバックをカバンから出すのを手こずっている自分に「お持ちの袋があればパン入れますよ」と。
あたふたしながらやっとカバンからエコバックを出して渡すと魔法のようにあっという間にエコバックにパンが入っていく。
どっしりしたパンは下の方へ、ふわふわのパンはその上に収納される。
パン職人である女店主の美しく無駄の無い動きに感動しながら会計を終え。

この日、とうとう自分はこのお店のパンの大ファンになってしまったことを女店主に告白した。

「またお待ちしてます!」
と、満面の笑みでパンが満杯に入ったエコバックを渡してもらい店を出た。

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