見出し画像

VUCA時代における企業のレジリエンスを考える

詳細は割愛するが、先日大学にて企業と学生がレジリエンス(Resilience)について議論する機会があった。
そこで複数の企業から「製品ポートフォリオの多角化がレジリエンスをもたらす」という考えを聞くことが出来たので、この記事に詳しく残しておこうと思う。


レジリエンス(Resilience)とは?

「回復力」「弾性」「しなやかさ」。

心理学においては「困難で脅威を与える状況にもかかわらず、うまく適応する過程や能力,および適応の結果」のことを指し、精神的回復力とも訳される。

これが近年、組織論や社会システム論、さらにはリスク対応能力、危機管理能力としても広く注目されるようになったという。

こうした背景には、リーマンショックやコロナウイルスといった変化が激しく予測が難しい(=VUCAな)社会があると考えられる。

個人的にはビジネスの文脈でのResilienceは「しなやかさ」という訳がハマっている気がしている。


「レジリエント」な企業とは

従来の企業は、配当などを通してステークホルダーの利益を最大化することを目的として短期的な利益を追求し、変化の少ない計画を立てて実行するとされる。

しかし、「レジリエント(しなやか)」な企業であるためにはこうしたあり方を見直す必要がある。

企業は複数の時間軸でビジネスを捉え、将来の持続可能な業績のためには目の前の効率や業績を見逃す必要がある。

また、そうしたビジネスの対象は未知であり、変化するものであり、予測不可能であることを理解しなければいけない。

さらには、レジリエンスを実現するにはサプライチェーンや顧客、社会を含めた「システム」として取り組む必要がある。

この「Think in systems」ともいうべき考え方は、今年の夏に勉強した循環経済(Circular Economy)でも耳にしたものであり、今後さらに重要度を増していくものだと考えられる。

今夏ベルリン工科大学のオンライン留学プログラムで循環経済を学んだ話は後日またじっくり書こうと思う。


6つの原則

企業がレジリエントであるためには、次の6つの原則を考える必要がある。

①Redundancy(冗長性)

予期しないショックに対応できるようにシステムにバッファーを持たせる。同一製品を持つ工場を複数所有する、部品の在庫を数ヶ月分ストックしておくなどが例として挙げられる。


②Diversity(多様性)

標準化による効率と引き換えに、多様な人材を有することで新たな危機に対して柔軟に対応することができる。


③Modularity(モジュール性)

組織全体に影響することなく単一の要素・事業を切り離せるような仕組み。


④Adaptability(適応性)

試行錯誤を繰り返して変化する環境に適応する能力。


⑤Prudence(慎重さ)

あらゆる不測の事態を想定しておく心構え。
シナリオプランニング、机上作戦(war games)、危機的兆候のモニタリング、システムの脆弱性の分析などが例として挙げられる。


⑥Embeddedness(統合性)

SDGsなどの社会的目標に照らして企業の目標や活動を掲げること。


企業の方々と議論してみて

実際に企業の方々と「レジリエンス」に関して議論をしてみて特に印象深かったのが、「製品ポートフォリオの分散」を通したレジリエンスについて複数企業が説明していた点である。

前提として事業/製品ごとの強みが確立している必要はあるが、製品/事業のポートフォリオを多様化させておくことで社会情勢の変化にも対応できるというのが、ここで私が再確認したことである。

例えば、コロナ禍においては飛行機の生産は大幅減だったが、一方でEC市場が活性化したことで物流システムの需要は増加した。もし飛行機の部品生産と物流システムの両方を取り扱っていれば、需要の変動は相殺される。

こうして製品/事業の多様性が企業のレジリエンスを実現するという観点は、非常に勉強になった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?