呪い

今日も私の鼻はよく働くのね。

匂いは人の記憶にへばりつくの。
そんなことは知っているし、思い知らされているわ。
いつまで経ってもあの人のことが忘れられないの。

あぁ、あなたはこんな事思ってもいないのよね?

なんの意図せず発した香りで、私を苦しめるのよね?

本当に罪深い人よ。

あなたの匂いがするたびに、私の頭は固まってしまうの。
無意識に探してしまうの。

私だけが、探してしまうの。

あなたは私の匂いを覚えているかしら?

いないわよね、だって私は1人だもの。

別れ際に花の名前を1つ教えておくといいとよく聞くわ。
でも、あなたはそんな必要なかったわね。
私は教えておくべきだったけれど。

愛しい記憶が頭の中に駆け巡るから、新しい記憶が上書きされないのよ。できないのよ。

私がこの呪いから解かれるのはいつになるのかしら?

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