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ワインのヴィンテージとは何を指している?基本知識と当たり年も解説!

家具や古着、食器の世界と同じように、ワインの世界でも、「ヴィンテージ」という用語が使用されています。

そのため、“ヴィンテージワイン”と呼ばれるワインに、レアものや高級品というイメージを持っている方も多いようです。

しかし、ワインにおけるヴィンテージとは家具などとは意味合いが違うため、正しく理解しておく必要があります。

ここでは、ワインのヴィンテージについて学んでいきましょう。

ワインにおける「ヴィンテージ」とは


“ヴィンテージもの”と言われると、どことなく希少価値の高い高級品をイメージされる方も多いでしょう。

一般的なイメージとしてヴィンテージとは年代物と認識されており、定義は明確でないものの製造から30年前後経過しているものに使用されています。

このイメージによって、ワインにおけるヴィンテージも、“長期熟成を経た、年代物の高級ワイン”と解釈している方が多いようです。

しかし、ワインにおけるヴィンテージとは上記とは全く別の意味で使用されています。

ワインにおけるヴィンテージとは、「ブドウの収穫年」。

つまり、そのワインの原料となっているブドウが収穫された年をヴィンテージと呼んでいるのです。

例えば、2000年に収穫されたブドウを原料として造られたワインの場合、“2000年ヴィンテージのワイン”となります。

そのワインが熟成を経て2010年にリリースされたとしても、ヴィンテージはあくまでブドウの収穫年であるため、“2000年ヴィンテージのワイン”として流通するわけです。

ヴィンテージが大切な理由


ワインボトルのラベルを見ると、多くのワインに年代が印刷されています。

上記でお伝えしたように、この年代はワインのヴィンテージであり、ブドウの収穫年です。

なぜ、ワインにはヴィンテージが記載されているのでしょうか。

ワインの原料はブドウのみであり、そのブドウの出来栄えによって品質が大きく左右します。

ブドウは農作物であることから、栽培されている環境に強く影響されます。

とくに気候条件によって糖度や酸度、フェノール量に違いが発生するほか、病害などの影響もあるでしょう。

ブドウの生育期に日照量が豊富で雨もあまり降らない、昼夜の温度差も高く安定した気候条件の年。

降雨量が多く台風にも見舞われ、晴れたと思ったら異常な高温が続き夜間も気温がほとんど下がらなかったといった年。

前者のブドウは高品質となり、後者のブドウは品質的に厳しいヴィンテージと判断することができるでしょう。

通常、生産者は素晴らしいヴィンテージはブドウ本来のポテンシャルをいかした醸造を行い、厳しいヴィンテージは試行錯誤しながら良い品質のワインを造るための醸造を行います。

しかし、全く同じ品質のワインを仕上げることは難しく、やはりヴィンテージによる品質の違いが現れてしまうのがワインの面白さであり、怖さです。

一方、厳しいと言われていたヴィンテージでありながら、素晴らしいワインを生み出す生産者もいます。

プロフェッショナルな世界では、ヴィンテージの気候条件などを踏まえた上でワインが評価されることも珍しくありません。

また、一般の方であってもワインのヴィンテージを確認することで、どの年のブドウが使用されているのか一目瞭然であることから、熟成年数などもすぐにチェックできます。

これらさまざまな理由から、ワインにはブドウの収穫年であるヴィンテージが記載されているのです。

ヴィンテージのないワイン


ワインにとってヴィンテージは重要ですが、一方でヴィンテージのないワインも存在します。

ラベルを見ると、銘柄や産地は記載してあってもヴィンテージの表記がないノンヴィンテージと呼ばれるものを多く見かけるでしょう。

まず、ワインのヴィンテージは使用されているブドウの収穫年ですが、使用する全てのブドウが同じ収穫年とは限りません。

各国のワイン法における規則によって違いはありますが、EU加盟国の場合は原料ブドウの85%以上がその年に収穫されていることを前提にヴィンテージを記載することができます。

例えば、2024年に収穫されたカベルネ・ソーヴィニヨンを85%以上ワインに使用していた場合、ほか15%が別の収穫年であっても、そのワインのヴィンテージは2024と記載できるということです。

国によってはヴィンテージ表記が任意であることから、とくにヴィンテージを記載しない生産者もいます。

例えば、ヴィンテージではなく、さまざまなブドウ品種の原酒を複雑にブレンドして1本のワインを仕上げるといった場合、ヴィンテージが記載されないことも多いようです。

シャンパーニュなどは良い例で、ヴィンテージあり(ミレジム)、ヴィンテージなし(ノンミレジム)といった区分けがあります。

良いヴィンテージだった場合にだけヴィンテージありのワインを造り、厳しいまたは平均的なヴィンテージの際にはリザーヴワインをつくりブレンドでノンヴィンテージを造るといった判断をする生産者や産地も多いのです。(ノンヴィンテージが優れていないわけではない)

オールドヴィンテージワインについて


ヴィンテージは、一般的に希少価値の高い年代ものといったイメージとお伝えしました。

一方、ワインのヴィンテージはブドウの収穫年であるため、その意味とは違います。

しかし、ワインにも古いものが存在しており、一般的な意味合いでヴィンテージものと言われるような代物も存在しています。

そういった古く、価値の高いヴィンテージのワインは、「オールドヴィンテージワイン」と呼ばれており、若いワインと比較すると高額です。

オールドヴィンテージワインの定義は明確ではありませんが、ブドウの品質が高く長期熟成が可能なポテンシャルを持っていることを前提に、長期熟成を経たワインと考えるとわかりやすいでしょう。

ワインを正しく熟成するためには場所や環境を整えるコストも発生しますし、本数も多くないため希少価値も高まり高額になります。

酒販店で売れ残ってしまった、とくに売る予定がなく長期間放置していたといったワインも長期熟成ワインかもしれませんが、「オールドヴィンテージワイン」といった特別な存在とは違うため注意しましょう。

ヴィンテージと当たり年

ブドウが収穫されたヴィンテージが大切にされているワインですが、とくに素晴らしいヴィンテージだった場合には、「当たり年」と表現されます。

当たり年は例年以上に優れた気候条件のもと、平均的なヴィンテージよりもはるかにブドウの出来栄えが素晴らしい場合に使用されており、ワインによっては普段よりも高額になる場合があります。

とくに高級ワインの場合、ブドウの出来栄えが優れている=長期熟成のポテンシャルがあると判断されることが多く、当たり年のワインを大切に熟成させるといった場合も珍しくありません。

そのため、当たり年のオールドヴィンテージワインは飲み頃のピークを過ぎるまでは年々価格が高騰し、投機目的で入手する方もいるほどです。

ただし、注意したいのが当たり年は国や産地、地域によって違うため、“2000年のボルドーは当たり年”と言われても、フランス国内はもちろん、ボルドー全体のワイン全てが当たり年とは限らないところにあります。

生産者団体などがヴィンテージチャートを作成している場合もあるため、気になる産地の当たり年を調べたい場合は、これらヴィンテージチャートにアクセスしてみると良いでしょう。

ヴィンテージも重要な要素


ワインのヴィンテージは、そのワインの質を判断する上でも重要なポイントです。

同じ生産者であってもヴィンテージによってワインの個性が違うため、よりワインの面白さを理解することができるでしょう。

ヴィンテージは気候条件など、少々専門的な知識が必要となりますが、それもまたワインを学ぶ上で重要な要素になります。

ヴィンテージの基礎を押さえておき、実践にいかしてみてください。