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ワインの樽熟成とは!?樽がワインに与える効果を知ろう!

ブドウが収穫された後、そのブドウはアルコール発酵を経てワインとなります。

さて、ワインはアルコール発酵を終了してからすぐに瓶詰めされるわけではなく、ほとんどの赤ワイン、またそれ以外の一部のワインは木樽熟成が行われています。

なぜ、ワインは木樽で熟成されるのでしょうか。

ここではワインの樽熟成について学んでいきます。

樽熟成とは?


アルコール発酵を経たワインは、タイプによって木樽内で熟成が行われます。

木樽での熟成は通常、「樽熟成」と呼ばれており、ワインによって数ヶ月から数年の熟成された後に澱引き・瓶詰めされるといった流れです。

ワイン樽には、ステンレスやアンフォラ、クヴェリ、コンクリートなどさまざまあるものの、熟成用に使用されるワイン樽は一般的に木樽となります。

そのため、ここでの樽熟成は木樽での熟成を前提に進めていきましょう。

樽熟成による効果


アルコール発酵を経たワインが樽熟成される理由は、“樽による効果を得る”ためです。

その昔、木樽はワインを保存するためにも使用されていましたが、現在では保存というよりは、ワインの品質をより良いものにするために使用されています。

樽熟成による効果について下記の内容にまとめました。

  • 適度な酸化熟成が期待できる

  • ワインの色調をはじめ、化学的に安定させるため

  • 樽から風味や香り成分を付与するため

それぞれ解説しましょう。

適度な酸化熟成が期待できる

樽熟成に利用されている木樽には、フレンチオークやアメリカンオークなどの種類がありますが、どれも素材は木材です。

これら木樽は多孔性と呼ばれる素材であり、木目に非常に細かい穴があります。

目には見えないほどの小さな穴ですが、空気中の酸素を樽内に取り込めることからワイン
を緩やかに酸化熟成させることが可能です。

ワインの熟成というと悪戯に長期間放置しているといったイメージを持つ方もいますが、本来は微量な酸素による化学変化によって起こる変化を言います。

詳しくは後述しますが、酸化熟成によってタンニンが豊富な飲みにくいワインが熟成によってまろやかになったり香りが落ち着いて複雑になったり、どこかこなれた風味になるなど、若い頃には見られなかった品質へと変化します。

しかし、空気中の酸素を必要以上にワインと触れさせてしまうとスピーディーに酸化が進んでしまい、ワインの品質が高まるどころか劣化してしまうでしょう。

その、絶妙な量の酸素をワインに触れさせることができるのが樽熟成なのです。

ワインの色調をはじめ、化学的に安定させるため

一部の赤ワインを除き、基本的にほとんどの赤ワインで樽熟成が行われています。

赤ワインの色が、“赤色”である理由はブドウの果皮に含まれるポリフェノールの一種、“アントシアニン”の影響がありますが、じつはアルコール発酵を経たばかりのワインの色調は安定していません。

樽熟成による緩やかな酸化熟成によってアントシアニンなどのポリフェノールは反応を起こし、その結果色調が安定していくといった効果があります。

熟成が長期間進むと色調が赤色より赤褐色となりますが、これはアントシアニン量の変化と考えるとわかりやすいでしょう。

一方、ワインを化学的に安定させるといった効果も樽熟成には期待されています。

酸化熟成によってさまざまな成分が反応、また結合することでワイン中の成分が安定していくのは上記でお伝えしたばかりです。

できあがったばかりのワインの中には荒々しさが残っている、化学的に不安定といった場合もあるため、樽熟成によってそれらを安定化させる目的もあります。

安定化とは少し違いますが、樽熟成の特徴としてまろやかな味わいと表現されることが少なくありません。

これは、赤ワインに含まれている渋みに影響するタンニンが酸素と触れることで反応を起こし、少しずつその形を変化させていくことで渋みが和らいでいる結果です。

そのほか、樽由来のポリフェノールもワインに溶出されるため、それらがまた新たな反応を起こし、ワインを落ち着いた風味へと変化させています。

樽から風味や香り成分を付与するため

樽熟成によって樽由来のポリフェノールなどの成分がワインに溶出し、それが化学反応を起こしてワインに複雑味を足していきます。

とくに白ワインの場合、ワインに厚みやボディ感が足されるためフレッシュ&フルーティーな白ワインとは違うタイプのワインに仕上がることでしょう。

さて、樽熟成による効果の中でもワインに大きな影響を与えるのが、樽由来の風味や香り成分の溶出です。

樽の種類によって含まれる成分やその量に違いはあるものの、一般的に下記の成分がワインに影響を与えると考えることができます。

  • バニリン

  • グアヤコール

  • オイゲノール

  • ラクトンなど

成分名が出ると少し難しく感じますが、それぞれ見ていくと理解しやすいでしょう。

例えば、バニリンは「天然バニラ」の香りの主成分と言われているため、樽熟成されたワインの多くはバニラのような香りを持ちます。

グアヤコールはスパイシーな風味で、少しスーモーキーなニュアンスの風味に関与。

オイゲノールは、クローブの香りに関与するもので、クローブの香りがしっかり感じられる赤ワインは樽熟成をされていることがよくわかる証拠となるでしょう。

そして、ラクトンはオークやココナッツのような甘さを感じさせるもので、ナッティーでまろやかな風味に寄与します。

通常のワインが樽熟成を経た場合、ブドウ由来、醸造由来の香りだけでなく、上記のような樽由来の香りや風味が加わるわけですから、非常に複雑な風味に仕上がることは容易に想像できるでしょう。

タイプに合わせた樽使い


木樽には、大きく分けてフレンチオーク(トロンセ、アリエ、リムーザン)とアメリカンオークがあり、そのほかにもさまざまな種類があります。

アメリカンオークはバニリンやラクトンの含有量が豊富で、フレンチオークはより繊細な風味をワインに寄与できるなど、どの樽によって熟成させるかによってワインの特徴に違いが出るところが樽熟成のおもしろいところです。

さらに新樽の場合は風味化合物などの溶出量が多く、古樽になれば少なくなるため、生産者がワインをどのようなタイプで造りたいかによって選び方が変わります。

サイズもワインが触れる面積の多い小樽か、大きな樽かで付与される風味や成分も変わってくるでしょう。

そもそも樽の風味が必要ないといったことで樽熟成自体を避ける生産者もいたり、樽の風味をガッツリと取り入れた華やかなワインを造りたい生産者もいるなど、樽へのアプローチもさまざまです。

近年、ワインの世界では樽由来の甘くスモーキーな風味をしっかり付けたワインよりも、酸化熟成をメインに風味はさほどつけないといったエレガントでピュアなワインがトレンドになっています。

そのため、サイズの大きな古樽を使う生産者が世界的には増えてきていると言われているようです。

極端な話、どれだけ素晴らしいブドウを使用しようが、樽使いを間違えばワインが持つポテンシャルを失ってしまうこともあります。

じつは、樽使いはワイン生産者の技術力が問われるポイントでもあるのです。

樽熟成を知ればワインがもっとも面白い


樽熟成というと、ウイスキーで語られることが多く、原料ブドウが主役であるワインではその熟成年数程度で見過ごされている部分があります。

しかし、ワインにとっても樽熟成は重要な要素であり、樽によってワインがどのような影響を受けているかしっかりと押さえておく必要があるでしょう。

近年では、白ワインやロゼワイン、オレンジワインなど、赤ワイン以外を積極的に樽熟成させる生産者も増えています。

樽熟成を知ることで、よりワインの世界が面白くなるはずです。

本記事を参考に、ぜひ基本を押さえておきましょう。