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伝わらなかったら、もっとたくさん話せばいいのよ

 「伝わらなかったらもっとたくさん話せばいいのよ。」これはベトナム語を勉強し始めた頃、発音の難しさに心が折れかけていた私にベトナム人の先生がかけてくれた言葉である。私は仕事の関係でベトナムに駐在していた。ベトナム人のお客様と直接話すことも多く、ベトナム語の習得が必須だった。
 そんな中、仕事先の人に一生懸命ベトナム語を話してみても、「Ha?」と言われてしまう。(日本語の「え?」みたいなもの。でも日本人には結構刺さる…。) 6声調を使い分ける彼らには、「これくらい分かるでしょ?」は通じない。全く別の言葉に聞こえるらしい。
 伝わらないベトナム語に心を閉ざしかけていた私は次第に話すのがこわくなっていた。そんな中、「たくさん話せばいい」は新鮮なアドバイスだった。先生謂く、「たくさん話せば聞き取れる言葉があって意味がわかるかもしれない。」とのことだった。とてもシンプルなアドバイスだが、コミュニケーションの本質を突いているような気がした。「なぜ一言で分かってもらえると思っていたんだろう?私のベトナム語はまだまだなのだから、たくさん話して分かってもらう努力をしなくては。」と前向きな気持ちになれた。
 実はこれは、英語でも同じことらしい。先日お昼休みに、話の流れで会社の後輩から「久しぶりの英語の会議で緊張しています。何かいいアドバイスはないですか?」と相談された。その時に思い出したのがこの経験だった。「通じてないなと思ったら、もっとたくさん話してみたら?」と言ってみた。すると次に会った時、その後輩が満面の笑みで「あのアドバイス、効きました!」と言ってくれた。もちろんその後輩が意味のある説明を重ねたからこその結果なのだが、マインドだけでも参考になってよかった。
 日本語でさえも、同じだと思う。仕事のチームで、この人と理解が違うかもと思ったら一旦チャットを打つのをやめて、通話をするようになった。その通話を嫌がる人はおらず、むしろ関係性さえもスムーズになった。これは、「理解し合えない人とは一生理解し合えない。」と思っていた私の考え方を変えてくれた。それ以来、私の日々の大切な習慣は「伝わらなかったら、もっとたくさん話してみる。」になった。一歩近付いて見た先の景色は少し明るかった。

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