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「制限」こそが新しいものを生み出す(8トラックMTRでの楽曲制作から見えてきたもの)vol.1 (冒険小説 イン・ザ・ニュー・ワールド 第一話)

 とにかくお金がなかった。
 今からちょうど1年前のことだ。

 それまで僕は約3年間ひたすらに、ハー○オフで4000円くらいで買ってきたアコースティックギターとスマホのボイスレコーダー、そしてギターtabノートでの作曲を続けていた。

 どれも心を込めて、一生懸命作った楽曲たちだ。
 思い描いた形まで仕上げて、インターネットを通じて発表したい。そう思った。

 そして「DTMとはどういうものなのだろう?そしてどれくらいの費用がかかるものなのだろう?」
 僕はスマホでそれらを検索し、溜息をついて画面を閉じた。
 
 何度も言う。
 本当にお金がなかった。
 

 それでも作品を作って発表したかった。
 そして思った。
 「MTRでやろう」

 機械オンチな自分のことだ。むしろそっちの方がシンプルでやりやすいかもしれない。

 そうやって、有り金をはたいて2万円くらいの8トラックのMTRと、ハー○オフで3000円のべースを買い、愛用のエレキギター(Bacchusの1万4000円だった)、そして小さなリズムマシンで僕のレコーディングは始まった。

 ちっぽけな設備だ。
 でもやっと自分だけのレコーディング・スタジオが出来たような気がして、最高の気分だった。

 
            ☆
 
 今のこのコロナウイルスが落ち着いたら、次のステップに行こうと思っている。
 そこには新しい世界が待っているに違いないし、今この瞬間(STAYHOME期間)というのはその新しい世界への過渡期であるはずなのだ。

 
 冒険の始まりだ。何度目かの。
 そしてきっとこれまでのどの冒険とも違うものになる。

 変わらないのは今もここに「音楽」があるということ。

 
 実はこの記事のタイトルからも分かるように、単なるMTR録音の回想記みたいなもののつもりで書き始めたのだけれど、早速気が変わった。

 
 「冒険」を描こう。
 これまで誰にも見つからず、一片の光も当たらなかった音楽家の冒険だ。

 それではとりあえず、はじまりはじまり。

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