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ムーブメント『DUW6101』の秘密

少し前になりますが、当店メインブランドの一つ“NOMOS Glashütte(ノモス グラスヒュッテ)”のドイツ本社、工房、デザイン事務所にご招待いただき、同社のウォッチメイキングを実際に見させて頂く機会がありました。

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というわけで、本日はその際に同社開発部長であるテオ・プレンツェル氏に新型自社製ムーブメントの“Cal.DUW6101”についてお伺いしましたので、これについて詳しくご説明させていただこうと思います。

このキャリバーの基本スペックは以下の通りです。

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【ムーブメント厚】
3.6mm(100円玉を2枚重ねた厚さとほぼ同等)
【直径】
3.52cm
【パワーリザーブ】
約42時間
【仕様】
青焼きヒゲゼンマイを用いた自社製脱進機
両側ネジ固定バランスブリッジ
グラスヒュッテ3/4プレート
DUW制御システム
27ジュエル
青焼きネジ
グラスヒュッテ・リブ付きノモス・ペルラージュ仕上げロジウムプレート加工表面
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と、基本スペックは以上の通りなのですが、このキャリバーの素晴らしい点は3つ。

①禁止時間帯のない日付調整機能
②3.6㎜という自動巻としては圧倒的な薄さ
③マニファクチュールムーブメントならではの美しさ

ただ上記についてすべてご説明するととんでもない長文になりそうですので、今回はDUW6101で初めて採用された、「①禁止時間帯のない日付調整機能」について詳しく説明させて頂きます。

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さて、今回ご説明する【①禁止時間帯のない日付調整機能】というのはDUW6101のメインともいえる機能で、これまでのデイト付き機械式時計を使用するうえで必ず注意しなければならなかった“日付の早送りをしてはいけない時間帯”が新たな機構により完全に排除されました。

通常、デイト付き機械式時計は、日付の早送りをしてはいけない時間帯(9時~3時)というのが存在します。この時間帯に日付の早送りを行うと故障の原因につながることがあるので、当店では購入頂いた際にオーナ様に向けて必ずご説明する重要事項でもあります。

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その煩わしさを無くすため、このDUW6101ではルーローの三角形のようなカム(運動の向きを変えるパーツ)と日送り爪(0時に日付を1日送るパーツ)、そして星型歯車(日付早送り用の歯車)が新たに設計&搭載されています。

ルーローの三角形型カムと日送り爪は、その下にセットされている日送り車(歯車)と違う回転数で回転します。

通常、日送り爪というパーツが午後9時頃になるとカレンダーディスクの爪に引っかかりはじめ、0時付近で爪を押し、日付を変更します。さらに、午前3時頃までに爪がかからない通常の状態に戻っていく…という動きをするため、その時間帯はカレンダーディスクを早送りしてはいけないというのが常識となっています。

要は、爪が掛かった状態でディスクを回すと、日送り爪やカレンダーディスクの爪が欠けたり摩耗したりする可能性があるのです。

しかし、このノモスグラスヒュッテが搭載するパーツは日付変更のギリギリの時間までは爪が空転、変更の瞬間のみ爪が当たるという構造を開発。これにより、禁止時間帯を極限まで縮小することに成功しました。

しかし、数分とはいえ爪がかかっている時間帯に無理やり日付を送れば部品は欠けそうなもの…

そこで、ドイツ本社にて開発部長のテオ・プレンツェルに直接話を聞いたところ「壊れません。大丈夫。」という回答が…。というのも、まだご説明していないもうひとつの“星型歯車”がその部分において大きな役割を持つことがわかりました。

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上画像の下部分に写る5つの足が伸びた星型歯車は、このDUW6101に初めて搭載されたパーツで、「爪がかかった状態での日付早送りをキャンセルする」という大きな役割を持ちます。

通常、日付の早送り時にはこの星型歯車の回転がそのままデイトディスクの回転となり、日付の早送り調整を可能としています。

しかし、爪がかかった状態での日付変更時に危険な圧力を感知すると星型歯車と下の歯車が接続を解除し、星型歯車は回転をストップ。これによりデイト爪の破損を防ぐという作りになっているのです。

これにより0時付近に日付変更をしたとしても、ムーブメントに影響が及ぶ可能性はほとんど無いと言えるようになったのです。

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実際、開発部長のテオ・プレンツェル氏によると「ノモス グラスヒュッテの製品は部品交換を出来るだけしなくて済むように設計している。」と説明がありました。

それは特殊合金や素材面の話だけでなく、故障の原因を取り除くために「新しい機構を開発する」という期間もコストもかかる方法を選べるというだけで、ノモス グラスヒュッテの時計製造技術の高さがわかりますね。

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もちろん他にも、青焼きのひげゼンマイを搭載した自社製脱進機「ノモススイングシステム」を採用していたり、3.6mmという薄さを実現していたりとご説明する箇所が多すぎるほど…。

このDUW6101を搭載した「タンジェント 41 ネオマティック アップデート」は、世界で最も権威のある時計の賞“ジュネーブウォッチグランプリ2018”の部門賞を受賞したことでも大きく話題となりました。

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デザインにこだわるのはもはや当たり前。そこに高度な時計製造技術を融合するノモス グラスヒュッテは今やドイツを代表するマニファクチュールに成長したと言って間違いないでしょう。


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