Re
ポケットにコンドーム1つだけ、
ブラジャーとショーツは柄を合わせておく、
その程度互いに淡い期待があった。つまりは共犯。
「あ」のひとことがポンっと通知に来た
「まちがい?」じゃないのは知ってる
「ひさしぶり」何かに期待して
「と、見せかけておひさ」と返ってくる
「なにかあったの?」と聞いてみる
どうやら彼女と喧嘩したそうで
女の子を怒らせるような人だと思ってなかったからおどろいたけど
まあそんなんで別れるような奴じゃなさそうだしなと思い、エールを送ってそこそこにラインを切った
私にも彼氏ができたことを伝えて。
数ヶ月後「仲良くやってるかい?」と
「それなりに〜だよ」優しくて大人で、私のことが大好きな彼氏に不満なんて抱く訳もなくここまでやってきている 嘘じゃない
「夏のうちに顔みておこうかと思って」可愛くねえ誘い文句だけど、悔しいながら同じ気持ちだった
初めて会った蒸し暑い池袋 汚い路地をふたりで進んで行ったのは去年のこと。健やかに彼氏を愛して「幸せだね」って過ごす青い夏はどこか私には似合わない気がしていた。お前とドロドロになって、罪悪感も執着も見ないふりをした夏をちょうど私も思い出してた
トントン拍子に話が進んで「じゃあ明日の18時」
半年ぶりに会ったお前は髪を黒く染めて切って、水色のシャツを着て、メガネなんか付けて。
「髪の毛バッサリいったね」という第一声に、年が明けてから会っていなかったことを思い出した
選んでくれたお店で、立ちカウンターに並んで
「彼女どんな人なの?」と聞くと
「言ってなかったっけ、別れた別れた」と
呆気なさにおどろいた
別れた理由もはたから見ると呆気なくて、やっぱりこの人は誰かと付き合うことに向いていないんじゃないかと思う反面、
「俺の話はいいよ、終わったんだから。君は?」と言いつつも、何度も元カノの話に戻ってしまうあたりお前なりに「ちゃんと彼氏」だったつもりなんだと思ったり
就職活動を前に長期インターンに行ってみたけど1週間くらいで辞めた話や、芸能事務所のオーディションに行ってみた話、「鼻をほじる」動画がYouTubeで少し再生された話 どれも「器用貧乏」だと自分で皮肉ってしまうお前らしくて
「彼女は頑張ってたのに 俺って自信があるだけで何も」なんて卑屈になるのはらしくなくて、
けど「あんたは頑張ってるよ、寂しかったね」なんて頭を撫でる権利は私にはない
7割焼酎のホッピーを飲んでいたら、気付いたら「もう帰るの?」なんて言ってしまって
「え?」って、驚かせた
「目白まで移動していい?」スマホの画面に映る〝ホテル〟の文字は見ないふりをして「いいよ」と応えた
そこからは元通りのはずだった。
どうやら私の身体は半年間で愛し合うセックスを知ってしまって
本当に私のことが大好きな彼氏のことを、私も本当に大好きだし、これから先のことも考えている
それなのになぜ?と言われるかもしれないけど、
人間ってそんなに整合性は持ち合わせてないでしょ
だから、でも、あんなに気持ちよかったはずのお前の手が、全く乾いたものに思えた。ところどころ、「これ好きだもんな」と言われても、「まあそうだったかもしれない」としか思えなかった。そんな程度の行為に、彼氏の気持ちを裏切ってしまったのが悲しい気がした。気がしたことにしている。
記憶をそこそこに亡くし、目が覚めた私をもう一度求める。ゴムはもうないのに始めたお前に驚いた。「そんな人じゃなかったのに」言いかけた口を閉ざして静かに喘いだ。
0.2mmの壁すらなくなったはずなのに、近くも温かくもなかった
メイク道具も着替えも何もかも持っていない
明らかに朝帰りな風貌のまま、翌朝、二日酔いでふらふらしながら家路についた
参加するはずだったインターンをすっぽかし、夕方まで眠った
二日酔いで貧血だった私を心配するようなラインが来ていた やっぱりらしくないなと思いながらも
続けて 「まあまたそのうち」と来ていたラインに、「またね」と返した
彼氏がいるのにこんなことができる女だと知られた以上、続きはない。
いつまで互いを溶かし合えるんだろう、またどうせお前はすぐに私なんかよりめちゃくちゃ可愛い子とスワイプで出会って「ちゃんと彼氏」して私を切るんだろうし、次こそは、もう会えないんだろうし。
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