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第1回SDGsアワード内閣総理大臣賞のまちづくり(1) ​〜北海道下川町〜

※2019年4月25日初出の記事をnoteに引っ越ししたものです

旭川から車で北へ3時間。最低気温がマイナス30度という極寒の地にある下川町。その中にある高齢化率50%の限界集落がわずか5年で高齢化率25%に下がる奇跡が起きています。​
それは町の財産である森を60年周期で活用し続ける取り組みに惹かれた人たちの努力の結果です。
第1回のSDGsアワードで内閣総理大臣賞を受賞したこの町の魅力を探ってきました。
ちなみに取材した日の最低気温はマイナス20℃。
駐車した車の内側から凍るはじめての体験でした。

 話し手:下川町政策推進課SDGs政策推進室 主事 和田健太郎さん
​ ​聞き手:サイボウズ 野水

60年かけて森林を順番に切って育てる循環型森林経営

下川町の空撮。東京23区と同程度の面積で人口は3,000人。町のほとんどは森林に覆われて川沿いの狭い地域にほとんどの家屋が密集している。

昔からSDGsを意識されて活動してきたっていうわけではないんですよね。

​わけではないですね。下川町でも過疎化になってきて、やっぱり地域を盛り上げなきゃいけないっていう話がでた時に、経済と環境と社会の三本柱がこの持続可能な地域を作るためには必要だっていうのを打ち出したんです。

それいつの話なんですか。

それが2001年。

2001年、すっごい前ですね。2001年の時点で持続可能な、っていうことをもう言っていたんですか。

​​そうです。それには3つが必要だっていうふうに。

どうしてそこに行きついたんですか

地域の中では、産業を活性化して雇用を生んでっていうところはあったと思うんですけれど。それだけじゃダメだっていう議論の中でそういうお話が出てきたりとかですかね。

前々代の原田町長がすごく森づくりに力を入れていた方で、その方が考え出したのが、循環型森林経営と言って、町が持っている3,000haの森を50haごとに60年かけて、順々に伐採していく、そして61年目に元の1年目を切ると、60年間育っているのでまた切れて、永続的に材が出てくるというような考え方でして。

大河ドラマのような壮大な話ですね

今まで先代が守り抜いてきた土地を、自分たちが価値を付けてやっていかなきゃいけないんだってことを打ち出したのが、次の安斎町長で それが2000年とかです。

世代を超えて継承発展させてるんですね。これってやっぱり林業でどうやったら食えるようになるか、みたいな、そういう視点だったんですか?

​下川町の優位である森林を核にそこから様々な産業を生んでいこうという考えがありました。

なるほど

下川町がその環境でいろいろ評価を受けているんですけれど、国に行ってみて一つ分かったことがあって。下川町は環境だけをやるのではなく、経済と環境をしっかり両輪でやっていくっていうところが非常に評価をされていました。

木質バイオマスボイラーのランニングコストが払えるかどうかとか、熱需要をしっかり調べて、経済的にも成り立ったうえで環境をやっていくっていう、この経済・社会・環境、この3本柱をちゃんとやっていたっていうところがありますね。

バイオマスボイラー入れましょう、みたいな話じゃなくて、循環型で林業をしていこうっていうところから来ているから?

そうですね。循環型で出てきた材をしっかり使い切る。

木材を切り出すとき、木を切って丸太にしますので、枝を打つじゃないですか。そうすると枝がその場に捨てられていたんですけれど、それを拾い集めて蒸留してエッセンシャルオイルにする事業とかが生まれました。

さらに、そこには林地残材といって引っ張り出すのにコストのかかる木があって、熱として供給して少しでも付加価値をつけようっていうことで始まったのが木質バイオマスボイラーになっています。

下川町で導入されているバイオマスボイラ。地域全体に熱を供給しているのでめちゃ大きい。
外にチップを投入する場所があり、トラックで運ばれたチップが、ベルトコンベアで供給されてボイラに投入される。朝には町の何箇所かで白銀の中、ボイラーが煙を上げる光景を見ることができる。

人口が絶対ではない、ずっと住み続けたくなる町になることが大切


ところで、ジャパンSDGsアワード の第一回総理大臣賞受賞ですが、SGDsは最近出てきたキーワードなので意味付けは後付けじゃないかなっていう気がするんですけれど。すみません…。

 ​SDGsに乗っかってやるっていうよりかは、もともと出てきていた、この持続可能なビジョンがあるので、それを実現するみたいな、その延長線上でSDGsとかがあるっていう感じです。​

考え抜いていったらゴールは同じになったというところですね。
さっき出てきたカスケード利用っていうことを、もうちょっと掘り下げて伺いたいんですけれど。

ゼロエミッションだとかカスケード利用っていうんですけれど、1本の木を全て使い尽くす、みたいな感じでして。

もともと森林組合の組合長が「もったいないから!」みたいな話で、じゃあこれもこれにしよう、あれもこれにしよう、みたいな話でやってきたんです。

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ここに書いてあるとおりなんですけれど、これだけ今、下川町では作っていて、大きな大径木は建築用の材ですとか、中径木とか小径木、細いやつだと杭にしたりですとか。あとは炭ですね。
炭にした時に出てくる煙を冷やして、木酢液っていう液体にして、それも売るんです。

木酢液にこういう材を漬け込むことによって天然の防腐防虫剤になるので、さらに付加価値を付けて売るなどしています。​

煙も逃さないんですね

エッセンシャルオイルの事業も、もともと森林組合で最初できないかって言っていて、やっていったものがNPO法人 森の生活に行って、さらに株式会社化したっていう形になっています。
あと最後にどうしても使えないものはチップにして燃やす。

エッセンシャルオイルのワークショップの風景。これは観光用で製品用は工場でしっかり作ってます。
このワークショップは、いっしょに山へ入って枝を払い、集めた葉を蒸留してオイルを作る工程を実際に体験できます。もちろん作った天然成分100%のオイルは持ち帰って自分で使えます。

町の公共施設のエネルギーの半分くらいがバイオマスボイラーでまかなえているって聞いたんですけど。

ざっくり行くと、まずここ、役場ですね。ここは面的に供給をしていて、役場の横にボイラーがあって、役場、消防、公民館、町民センター、あとハピネスっていう総合福祉センターにまとめて供給をしています。あと住宅にも供給しています。

じゃあこのへんに住むと得ですね。(笑​)

まあ、そこは町営住宅なんですけれど。
あとは小学校と病院に1台のボイラーから供給しているのと、特養の老人ホーム、中学校、そして離れたところにある一の橋という集落です。​
一の橋もここと同じように面的に供給しているので、複数の施設に供給をしているという感じになります。​

そうとう熱量がありますね、そうなると

公共施設の熱需要の64%をカバーしているっていう形になります。​

すごいな。それ、お金に直すといくらになります?​

昨年の、灯油でたとえば供給した場合と、木質チップでやった場合は1900万円プラスになっていて、うち半分は設備の更新費用、うち半分は子育て支援、保育料の軽減だとか給食費とかに使っているっていう感じです。​

ところで、ITとかっていうことでは、SDGsとかの取り組みの中でなにか使われていたりとかってします?​

今現在、これといったものは使っていないんですけれど、IoTとかITとか、そういったところは今後使っていくっていうのはやろうとしています。農業だったらハウス栽培が下川町はメインでして、そこの温度管理とか湿度とかっていうのを、センサーを設置して、どこにいても見られるようなものを今、試験的にやったりしています。​

林業とかもそうですよね、ドローンを飛ばしたりとか

そうですね、ドローンを飛ばしていたりしますし、じつは7年ぐらい前には航空機からレーザーを地表に向けて照射をして、木の生長を管理するシステムを導入しています。

やっぱり取り組みが早い!
ところで、 ゼロエミッション といえば、実際に二酸化炭素の排出量とか、目標値があったりとかするんですか?

2022年には、1990年を基準として、二酸化炭素の排出量を約62%削減する。という目標があります。​

後半は将来のまちづくりへの思いを掘り下げます。


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