問題4.モルトとは一体何者なのか?
モルト(麦芽)は、ビール造りのバックボーンだ。これがなくてはビールにならないもの。カレー作りでいう玉ねぎのような存在だ。玉ねぎは、火を通してカラメル色にし、スパイスを絡めてカレーの「素」を作る。モルトも、熱水の中に浸水させ、デンプンから糖分を生成し、ビールの「素」となる麦汁を作る。
モルトはビールに甘味を与え、ホップの苦味とのバランスを整えてくれる。
実際、麦汁を舐めてみると優しい甘さが心地よい。
アメリカでは、モルトのテイストを表現する際よく
「Bready : パンのような」
「Crackery : クラッカーのような」
「Biscuity : ビスケットのような」
というワードが使われる。お茶タイムの軽食に出てきそうなリストだ。
色の濃いビールにはローストされたモルトを使用し、コーヒーやチョコーレート、リッチなスモーキーフレーバーをビールに加えることもできる。
アメリカではここ数年間、「ドライで強烈なフルーティかつホッピーな」ビールが人気になり、モルトはいつしか醸造者に軽視されがちの時期があった。が、最近その傾向も変わりつつある。多くの醸造家が、モルトの重要性を見つめ直し始めた。
では、そもそもモルトの正体ってなんなんだろう?穀物の一種?そうとも言える。
モルトというのは、穀物でモルト化されたものをそう呼ぶ。
「モルト化!?」
と一瞬思ったに違いない。英語で「malt」には、noun:名詞とverb:動詞、両方の役割がある。
malt(n)はモルト、malt(v)はモルト化と考えればいい。(ちなみに、訳すときにここで頭をなやまされたものだ(汗))
つまりこんなことが言える。
「My girlfriend malts grains to make malt 〜僕の彼女はモルトを作るために穀物をモルト化する〜」
モルト化は実際簡単なトリックだ。調理のようなもので、きっと誰にでもできる。3ステップで説明しよう。
1)浸水させる。
2)発芽させる。
3)乾燥させる。
まず、1)生の原料を浸水させ数日間おく。そうすることによって2)発芽し、その際に我々が糖化という工程で(前回の記事に紹介しましたが)必要な種類の「酵素」を生み出す。
3)穀物が発芽し始めたらすぐに乾かし、モルト化の完成。
これがモルトの作り方。モルトは種類によって他にもローストしたり少し異なったやり方もあるが、その辺のよりディープな世界は、後々触れていくことにする。
文 Ben Emrch / Head brewer
訳 金子 巧 / Brewer & PR