NOMCRAFT brewing

ポートランドで醸造経験のあるアメリカ人ブリューワーが、ビールに関する森羅万象さまざまな…

NOMCRAFT brewing

ポートランドで醸造経験のあるアメリカ人ブリューワーが、ビールに関する森羅万象さまざまな疑問について、自由気ままに考察し綴ってます。和歌山県有田川町にて旧保育所をリノベーション改築したクラフトビール醸造所、2019年春オープン。

最近の記事

問題6. アメリカンスタイルのホップブームはどうやって流行ったのか?

ホップは、ビールに苦味を与えモルトの甘味とのバランスを整えてくれる繊細さ、シトラスや様々なフルーティテイストを与えてくれる派手さも兼ね備えている。 さて、歴史的に見るとホップの役割の推移が分かる。 長い間、ホップは菌からビールの安全を確保するために使われてきた。長い航海でも腐らないように保存できるようにだ。 アメリカでクラフトビール文化がスタートした当時は、イギリススタイルのビールを真似て醸造されていた。イギリススタイルのビールは、しっかりとしたモルトを感じられ、ホップ

    • 問題5.ホップとは一体何者なのか?

      僕たちが「さあビールについて語ろうぜ!」という時はいつだってホップの話になる。 アメリカ人の間では特にそうだ。アメリカンスタイルのビールにおいて、ホップはバンドのメインボーカルのような存在で、口の中でひときわ目立ち、人々を「wow!!」と言わせる。 そういう僕も、グラスに注がれたキレッキレのIPAを飲み、グラスを机に置いて思わず「wow」と漏らしてしまうことは多々ある。 ホップについて、学術的に僕が知っていることといえば、ホップは蔓性の多年草であり、学名はフルムス・ルプル

      • 問題4.モルトとは一体何者なのか?

        モルト(麦芽)は、ビール造りのバックボーンだ。これがなくてはビールにならないもの。カレー作りでいう玉ねぎのような存在だ。玉ねぎは、火を通してカラメル色にし、スパイスを絡めてカレーの「素」を作る。モルトも、熱水の中に浸水させ、デンプンから糖分を生成し、ビールの「素」となる麦汁を作る。 モルトはビールに甘味を与え、ホップの苦味とのバランスを整えてくれる。 実際、麦汁を舐めてみると優しい甘さが心地よい。 アメリカでは、モルトのテイストを表現する際よく 「Bready : パンの

        • 問題3.ビールはどうやって作られるのか?

          ビールには様々な香りがあって、ぐっとくる苦味もあれば、チョコレートやウイスキーのような甘味もある。炭酸の強さもスタイルによって異なるし、色だって透き通った黄金色から漆黒のような色さえある。 さて、どうやってビールは作られているのか皆さんはご存知か? 僕は若い頃ポートランドの醸造所見学に行っては、大きな銀色に輝く設備を見ながら口をぽっかり空けた。 「なんてかっこいい機械なんだ。」 そして、ブリューワー(醸造者)の話を聞くたびに、頭を悩ませた。 糖化?麦汁?煮沸?発酵?

        問題6. アメリカンスタイルのホップブームはどうやって流行ったのか?

          問題2. クラフトビールとマイクロブリュワリーの違いは何?

          今回は少しコアな、アメリカでの"クラフトビール"という言葉が生まれた話。 アメリカでは、写真のようなマークが”クラフトビール”である証となっている。このマークがないと、正式なクラフトビールとは認められないということだ。 日本では発泡酒とビールで区別するが、そんな感じだろう。 アメリカでクラフトビールが始まった頃はそもそも”クラフトビール”という言葉は存在していなかった。その代わりに、僕らはそのビールを作る醸造所のことを”マイクロブリュワリー”と、呼んでいた。 マイクロブ

          問題2. クラフトビールとマイクロブリュワリーの違いは何?

          問題1. クラフトビールとビールは異なる飲み物なのか?

          クラフトビールとビールは果たして異なる飲み物だろうか? 答えは「Yes」。でも「No」だ。どっちだよ、と言われるかもしれないが 「クラフトビールの定義をしろ。」と言われるとなかなかはっきりとした答えが出てこないものだ。 というのも、この定義は常に変化しており、国や立場によっても異なるから。 ある人は言う、「クラフトビールは、ビールよりも香り高くバラエティに富んだものだ。」 ある人は言う、「いわゆる大手よりも小規模な醸造所で作られるビールは、クラフトビールだ。」 ある人は言

          問題1. クラフトビールとビールは異なる飲み物なのか?