こんにちは「中の人」です part5
(前回より続く…)
「○○くん(中の人のこと)お母さんが死にそうだ」
2007年の初秋、10年以上連絡がなかった父違いの兄から、母が末期がんであることを知らせる電話がありました
それからわずか7日後、母は虹の橋を渡りました
母と最期に会ったのは2年前に妻と6カ月の息子を連れ札幌の母宅に遊びに行ったときで、母は無言で必死にほふく前進するい小さな生物(息子)に戸惑いの表情を見せていたのを思い出しました
しかしそんな感傷に浸る暇もなく、あれよあれよという間に葬儀の準備が始まります
大人の事情で中の人が喪主を、施主は父違いの兄と母の最後の彼氏の山田さんが担当したのですが、母と親交があった美術関係者やユリアンヌ時代の客やホステスを大勢お招きし、まぁまぁ賑やかに送り出すことができたと思います
通夜葬儀と一連の儀式を終えた夜、母宅に
●母の一番目の旦那との間にできた子(中の人の兄)
●母の二番目の旦那との間にできた子(中の人)
●母の最後の彼氏(山田さん)
という不思議な関係の3人が集いました
(元料理人の)山田さんの手料理をつまみながら母との思い出話を語り合うも、中の人と兄の心配の種は高齢の山田さんの今後です
札幌市内のレストランで母と出会い恋に落ち、シェフの肩書を捨てて母とともにスペインに移住し、それから10数年間画家見習の母をサポートし続けた山田さん
心の支えを失い生きる力が失せたように感じる山田さんの横顔を見るにつれ、兄も中の人も不安が増幅します
夜も更け酔いも深まるなか父違いの兄弟が出した決断は「母が最後に愛した彼氏を俺たちが生涯見守る」ということでした
二人の決断を聞いた山田さんの表情は(お酒のせいもあるかもしれませんが)ちょっと明るくなった気がしました
ところがやっぱり中の人の家系
この話「美談」では終わりませんでした
母が所有していたマンションの移転登記の手続きで判明したのですが
なんと!
なんと!
山田さんには奥様がいらっしゃったのです!
これは中の人の空想にすぎませんが、おそらく母は山田さんに奥様がいらっしゃったことを知っていたのではないかと思います
なぜなら20年近く共に過ごしながらも、母が旧姓を名乗り続けたのがその理由です
そして夫の帰りをただただ待ち続けた山田さんの奥様を慮ると胸が痛みました
二人の女性の愛情に甘え続けた山田さんは今でも母との思い出が詰まったマンションに一人で住んでおり、私たち父違いの兄弟は山田さんを見守り続けています
なぜか憎めなくて放っとけない男なんです、山田さんてやつは!
(次回に続く…)
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