テレワークの標準化がもたらす未来について考える
6月13日(土)の日経新聞の1面に「在宅勤務が標準に・・・」という記事がありました。
記事を要約すると、
・欧州で「在宅勤務権」の法制化が進む。
・米国企業、在宅勤務の恒久化
⇒ツイッター社 全従業員の在宅勤務恒久化
⇒フェイスブック 5年~10年かけて全従業員の半数を在宅勤務に転換
・フィンランド、2020年1月に労働時間の半分以上を自宅を含む好きな場所で働ける法律が施行
・オランダ、2016年に自宅を含む好きな場所で働く権利を認める法律が施行・日本、5月29日~6月2日のテレワーク実施率は25.7%(パーソル総合研究所調べ)
・日本での定着には人事評価制度の改革などが必要。
ということが書いてあります。
在宅勤務・テレワークが恒久化することで、企業側、従業員側にはそれぞれどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
また、在宅勤務を進めるための課題は何があるのでしょうか。
本日は、そのことについて考えてみたいと思います。
1.在宅勤務・テレワークの恒久化によるメリット
まずは在宅勤務が恒久化されることのメリットを考えてみます。
<企業視点>
企業からすると、
・オフィスの賃料を抑えられる。安くできる。【コスト削減】
・交通費の負担がなくなる。【コスト削減】
・副業人材を雇いやすくなる。【人材活用、戦略】
・エリアに捉われないため、採用がしやすくなる。【人材活用】
などがあると思います。
オフィスの賃料が下がることで固定費が削減できれば、その分はまるまる利益になります。
また、人の採用もしやすくなるのではないでしょうか。特に、地方の会社で「勤務地」が原因で採用が進まなかった企業も、テレワーク、在宅勤務がOKであれば、採用対象を広げることができます。働き手が少なくなっている地域にとって、このテレワークの恒久化は一つの生きる道になるかもしれません。
<従業員視点>
従業員側からすると、
・在宅勤務によって、育児や介護をしながらでも仕事ができる。
・通勤時間が短縮できる。ゼロにできる。
・エリアを問わず働くことができる。仕事を探す幅が広がる。
・通勤時間が減った分、副業ができる。
などがあると思います。
「勤務地」によって制限されていた働き方が、テレワークによってより柔軟になるため、育児中や介護をしていることで思うように仕事ができなかった人たちへのチャンスが広がると思います。
2.在宅勤務・テレワークの恒久化によるデメリット
テレワークの恒久化には、当然デメリットもあります。
<企業視点>
・会社への帰属意識が薄くなる 【仕事全般に影響】
・部下の仕事の管理が難しい 【人事・労務面】
・勤務時間の管理が複雑になる 【人事・労務面】
・テレワーク環境を整えるための費用がかかる(パソコンの支給 など) 【コスト面】
一番大きなデメリットは、帰属意識の低下だと私は考えます。
テレワークによって人とリアルで会わなくなることで、「一体感」というものは薄れて行きます。現在は、少なくとも一定期間同じ職場にいた人が、テレワークになって離れてしまった・・・という状況です。
今後、初めからテレワークでしか仕事をしたこのない人同士が集まる会社となると、仲間意識、会社への帰属意識は著しく低下する気がします。
<従業員視点>
・長時間労働につながりやすい
・プライベートと仕事の切り替えが難しい
・光熱費の負担が増える
従業員側からすると、そこまで大きなデメリットはない気がします。
ただ、「いつでも仕事が出来る環境」となるため、その状況が気になる人はストレスが増える可能性があります。
※パソコンが置いてあると、ついメールをチェックしてしまったり・・等
メリットやデメリットについては、ざっくり書いていきましたが、だいたいこのようなものでしょうか。
3.在宅勤務・テレワーク恒久化による企業の変化
(1)テレワーク可能かは職種で決まる
在宅勤務、テレワークについて、そもそも理解が必要なことは、
「在宅勤務・テレワークが可能な仕事」と「在宅勤務・テレワークができない仕事」があるということです。
簡単に伝えると、工場勤務や小売店、工事業など「現場仕事」においては、テレワークはできません。その場所にいかないと、仕事ができないからです。
※もちろん、工場勤務でも管理をする人や、工事の現場管理も遠隔で可能な仕事もありますが。
(2)ジョブ型への移行
在宅で仕事をする場合、「社員に求めている成果」、「仕事の範囲」を明確にする必要があります。
ジョブスクリプションとよばれる、仕事を明確化するための資料などを用意していくことが、今後必要になると思います。
※大手企業では整っているところもありますが、中小・中堅企業では多くの企業でそのような資料はないと思います。
最近よくニュースなどにも取り上げられていますが、日本企業も今後は「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へと移行が進むと思います。
(3)成果主義の評価制度へ
仕事の管理が難しくなるため、従業員の評価は「成果」中心になっていくと思います。
自宅で働くことで、社員の働きぶりは見えにくくなります。
働いている姿が見えないと、勤務態度(遅刻の有無、仕事への姿勢、意欲 など)を評価をするのは困難となり、アウトプット(成果)でしか評価できなくなります。
私のようなコンサルタントや、営業職は成果が分かりやすいのでいいですが、大変なのは「管理部門」や「事務職」の人たちです。
管理部門などをアウトプットで評価する場合は、
仕事を棚卸して、どのような仕事があるかを一覧にします
その仕事1つ1つが「何分」「何時間」で終わる仕事か基準を作ります。
1日の労働時間を8時間とすると、8時間分の仕事をしているかどうかで、判断すれば良いと思います。
※現実的には、電話対応をしている時間や、他の社員と打ち合わせをしている時間、その他様々な時間があり、「8時間分の仕事」を日々アウトプットしていないと思います。そこをどう評価していくかは、今後の課題です。
4.テレワークの恒久化がもたらす未来
(1)ワークライフバランスから、ワークアズライフという考え方が増える。
ワークアズライフというのは、筑波大学助教授の落合陽一氏という方が提言した考え方です。
詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧下さい。
自宅が職場になることで、「プライベートと」と「仕事」を切り分けるのではなく、「プライベート」も「仕事」も一緒に考えるということが大事になると思います。
今まで以上に、「自分は人生で何がしたいのか?」を問うことが必要になってくると思います。
(2)都心から地方への移住する人が増える。
テレワーク、在宅勤務が進むと、職場の近くに住む必要がなくなります。
わざわざ高い家賃を払って、人の多い「都心」に住むメリットが少なくなります。
そうなると、自然が少し多い地方に住もうと思う人も増えるのではないでしょうか。月に1回や年に数回会社に集まることがあるかもしれませんが、その時だけ出社するのであれば、住む場所の選択肢は広がります。
テレワークについての制度が整うと、長期的には、海外(シンガポール、グアムなど)に住みながら、日本企業の仕事をする人もでてくると思います。
(3)成果主義になると、待遇面で差が拡大する。
先述しましたが、テレワーク・在宅勤務になると、ジョブ型となり、成果が評価をする企業が増えてくると思います。
成果で評価するということは、待遇面に差が出てくるというこです。
最近は少しづつ減りましたが、元々日本企業は「年功序列」という考え方で、成果に関係なく、長く勤めている人は等しく昇給をさせてきました。
成果主義になると、成果を出している人の給与が上がるということはもちろんですが、成果を出していない人の給与は下がります。
※平均して会社全体のアウトプットが変わらなければ、成果を出した人へ配分は、成果を出していない人から取ります。
<例>
①今までの評価制度(年功序列型、平等に評価をする場合)
成果 ⇒ Aさん:80 Bさん:50 Cさん:20 合計150
給与 ⇒ Aさん:50 Bさん:50 Cさん:50 合計150
②成果主義
成果 ⇒ Aさん:80 Bさん:50 Cさん:20 合計150
給与 ⇒ Aさん:80 Bさん:50 Cさん:20 合計150
極端な例ですが、こういうことです。
当然、成果主義にすると、Cさんから不満がでるかもしれません。
ただ、会社側からすると、成果を出してくれているAさんの方が大事なのでCさんの意見が通ることはほとんどないでしょう。
最後に、
テレワーク・在宅勤務が恒久化する未来において、私たち個人が考えなくてはいけないことは、次の2つです。
「人生をどう生きたいか」
「どのような仕事をしたか、どんな専門性を身につけたいか」
⇒もっと言うと、会社から「あなたは何ができますか?」と聞かれた時に「何でもできます」では生き残れない時代になります。「私は○○○ができる」と言えるものを持ちましょう。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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