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宇宙ビジネスを将来の事業の柱の1つとして考えてみる

今後成長が期待されている市場の1つに「宇宙産業市場」があります。
宇宙産業市場は2040年には100兆円規模に成長すると予想されている市場で、衛星サービスを中心に大手資本や技術系スタートアップの躍進が続いています。

<宇宙産業の市場予測>

※出典:米モルガンスタンレー調査資料

「宇宙」と聞くと多くの企業が自分たちには関係ないと思われるかもしれないですが、ロケットの開発のように直接的な宇宙産業でなくとも、「宇宙を利用する」という視点に立てば、あらゆる企業が今後宇宙産業に関わるチャンスが存在します。
 
■宇宙ビジネスの種類
宇宙ビジネスは大きく3つに分かれます。
 
(1)製造・インフラ 【宇宙活動を支えるビジネス】
①製造分野
ロケット、人工衛星、地上局などの製造を行う分野です。特に最近投資が盛んな小型ロケットや小型衛星などを製造する分野です。
 
②インフラ分野
宇宙インフラは、地上のインフラと同様に、世界中の人々が利用するサービスの目に見えないバックボーンとなっています。地上のインフラと同様、宇宙インフラも利便性やサービス、国家安全保障・防衛のために今後ますます重要になってくる分野です。
 
(2)宇宙利用【宇宙を人類が活用するビジネス】
宇宙の利用には、主に「人工衛星の利用」と「宇宙空間の利用」があります。
 
①    人口衛星の利用
人工衛星の利用は位置情報や気候変動などを調べることなどを言います。
このような場合の人工衛星は、“地球上のサービスの向上”を目的に使われています。
 
②宇宙空間の利用
宇宙空間の利用はその名の通り、地球にない環境の下でモノを作ることを表しています。
例えば、雲や天候に影響されない太陽光発電のような地球上ではありえない環境でエネルギーの蓄積を行うことなどがあげられます。
 
(3)宇宙探索【宇宙に人類が進出するビジネス】
この分野は人類が宇宙へ進出することを目的とする分野です。
主に人類がロケットなどに乗車して宇宙探査を行う「有人宇宙探査」と人間の存在を必要としない探査機のみが宇宙へ行く「無人宇宙探査」の2種類に分かれます。
 
製造・インフラや宇宙利用とは異なり、地球上のサービスを向上させることが目的ではなく、宇宙空間へ活動範囲を広げることを目的としている宇宙ビジネスの分野となります。
 
 
■宇宙利活用ビジネスの可能性
上記の(2)―②で述べたように、宇宙ビジネスに関与するためには、「宇宙を利用する」という発想が必要です。その発想を持つことで、一次産業から教育、金融・保険、インフラまで、幅広い業界が宇宙産業に関連した新規事業開発を行うことが可能になります。
 
宇宙を利用したビジネスの観点として、JAXAの新事業促進部は、ビジネスタイプを以下の8つに分類しています。
 
①    スマート・最適化タイプ
衛星データを使って、既存産業の効率化や最適化を図るビジネスのことです。
具体的には
・スマート農業(環境データ活用による栽培管理など)
・スマート漁業(海温情報等による効率的漁場探知)
・発電最適化(太陽光発電の受給予測)
・効率的災害対策と復旧(衛星画像による被害推定等の活用)
・航空機・船舶運航ルートの最適化(気象や海氷データ等の活用)
・小売マーケティングの最適化(衛星画像による顧客動向把握や気象データ等の活用)
・不動産取引の最適化(不動産の状況識別)
などが該当します。
 
②    統計・予測タイプ
他者より先に情報を把握することによる競争力強化を目指すもので、投資や保険での活用が多く想定されます。農業統計(作付面積・収量)や作物収量予測による先物取引、石油タンクの影の長さの識別による石油備蓄量推定、夜間光によるGDPなど経済活動の推定、といった利用方法があります。
 
③    事前情報による計画最適化タイプ
これも②と同じく、情報把握により競争力強化を図るものです。太陽・風力エネルギーのリソースマップによる発電所建設計画の最適化、土地被覆分類図等による都市開発計画、降水・土壌水分・水場情報等による水資源管理・河川管理計画、土木・建築での環境・社会影響評価や災害リスク評価、農業・林業における栽培適地の調査などに用いられます。
 
④    監視・モニタリングタイプ
高精度・リアルタイムな衛星画像等によって、さまざまな事象を監視・モニタリングするビジネスです。安全保障や違法船監視、違法伐採監視、工事進捗のモニタリング、世界遺産の監視、海洋汚染監視などに活用されます。
 
⑤    防災・被害軽減タイプ
自然界のリスクを監視し、防災・減災や被害軽減を図る活用方法です。衛星降水データを活用した洪水・地滑り・干ばつ予測や、地殻変動データ・地表面温度を活用した火山活動の監視、火山灰分布マップによる影響把握、被害推定(風水害・地震・林野火災・降雪等)および災害対策の最適化に利用されます。
 
⑥    保険タイプ
各種衛星データを新しいタイプの保険の開発につなげようという試みです。降水データ・収量データを用いた農業保険(途上国向け・先進国向けピクセルベースのリスク分散型保険など)や被害推定データを用いた損害保険などの実例があります。
 
⑦    対象物価値向上タイプ
衛星データをブランディングやPRを含めて活用する取り組みです。農産物価値向上(タンパク質含有量によるおいしいお米の識別)、不動産価値向上(地盤沈下がない物件)、観光資源の可視化などに用いられます。
 
⑧    その他
上記以外にも、発見タイプ(遺跡や鉱物資源の発見)、基礎データの提供タイプ(3次元地形図ビジネス)、データ提供・処理プラットフォームタイプ、教育・エンタメタイプなどが考えられます。
 
宇宙ビジネスにアンテナを立て、早い段階からチャレンジをしていくことで、どの企業でも宇宙ビジネスが今後の事業の主力になる可能性があると私は考えます。
ぜひ皆さんも、10年後、20年後の自社の事業の1つとして、宇宙ビジネスの可能性がないかを考えてみてはいかがでしょうか。
 

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