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副業・テレワーク時代に「有効求人倍率」を考えてみる。

日経新聞や経済について、少し分析をした記事をこれから書いていこうと思います。

「ノマケンの経済深堀り」(仮)というマガジンを作ってそこに記事を載せていく予定です。

このシリーズは、経済についての考察をnoteに投稿していく中で、私自身も勉強しながら、理解を深めていくことが目的です。経済アナリストでもなんでもない素人の記事ですので、温かい目で見守って頂けますと幸いです。


第1弾は、先日の日本の有効求人倍率について分析してみようと思います。


1.そもそも有効求人倍率って何?

まずは、有効求人倍率という指標について、簡単に説明していきます。

◆有効求人倍率は、求職者(仕事を探している人)1人あたりに対して、何件の求人があるかを示すものです。

◆調査・公表をしているのは厚生労働省です。

◆公共職業安定所(愛称:ハローワーク)で扱っている「月間有効求人数」を「月間有効求職者数」で割って計算されます。

有効求人倍率=有効求人数 / 有効求職者数

この求人倍率が、1を上回ればいわゆる「売り手市場」であり労働者の側に有利となり、1を下回ればいわゆる「買い手市場」で企業の側にとって有利ということです。

求人倍率が1倍というのは、求職者100名に対して、100の求人(仕事)があるということです。

1を上回っている状態は、例えば、求人倍率1.1の時は、求職者100名に対して、110の求人(仕事)があるということ。つまり、求職者よりも仕事の数が多いので、労働者側に選択肢があり、有利ということです。

※求人倍率が1を下回るというのは、求職者100名に対して、90の求人(仕事)しかないような状況です。(この場合は求人倍率0.9となります)

<ポイント>
有効求人倍率は、公共職業安定所(ハローワーク)を通じた求人・求職情報を利用するため、いわゆる民間をベースとした求人情報誌(リクナビ、マイナビ、ビズリーチなど)の情報は含まれていないということに注意が必要です。

今の時代、ハローワーク経由だけでなく、仕事を探す方法が多岐に渡っています。有効求人倍率については、厚生労働省が発表している数値と、皆さんの体感値をぜひ比べてみてください。
少しでも違和感、疑問を感じたら、自分の頭で考えてみると良いですね。


2.2020年4月の求人倍率は1.32


直近で発表された2020年4月の有効求人倍率は、1.32倍で、前月と比較して0.07ポイント低下しています。

2018年ごろから2019年は、日本の有効求人倍率は1.6前後と労働者に有利な「売り手市場」が続いていましたが、

2020年に入ってから、1月1.49、2月1.45、3月1.39、4月1.32と低下が続いています。

2月以降に関しては、コロナウイルスの影響によるものが大きいと思いますが、コロナによる企業業績の悪化による求人数の減少はまだまだ続くと私は考えます。

少し前まで、「転職をしたければいつでもできる」という感覚を持っていた人も、これから先は気を付けないと簡単に転職できない時代になるかもしれません。


3.職種別・都道府県別に求人倍率をみる


転職が難しくなるかも・・・と言いましたが、まだ日本の求人倍率は1.32です。100人に対して、132の仕事がある状態です。

注意しなくてはいけないのが、この求人倍率1.32というのは、全国・全職種の合計した数値だということです。

職種別や都道府県別にみると、実はかなりの差があります。


◆職種別にみると

全体の求人倍率は1.32ですが、

例えば、
・居住施設、ビルなどの管理の職業 0.96
・機械組立の職業 0.50
・製造技術者 0.55
・事務的職業は0.40
・美術家、デザイナー 0.31

など、求人倍率が1を下回っている職業もあれば、

・建設躯体工事の職業 8.98
・土木の職業 5.01
・建築、土木、測量技術者 4.76
・介護サービスの職業 3.97
・接客、給仕の職業 2.70

という、1を大きく上回っている職業もあります。

◆都道府県別にみると

・都道府県で求人倍率が高いのは、

1位 福井県 1.88
2位 岡山県 1.76
3位 東京都 1.73

東京よりも求人倍率が高い県が2つあります。
これは、求人数/求職者数 で計算されるためです。
実際に、求人数だけを比べると、東京都が何倍も多いです。

・都道府県で求人倍率が低いのは、

1位 沖縄県 0.91
2位 青森県 1.00
3位 神奈川県 1.03

という順番です。
こちらも、神奈川県という意外に思う県がランクインしていますが、
求人数に対して、求職者数も多いのでこのような結果になっています。

実は、2020年4月の有効求人倍率は、全国で1.32なのに対し、
関東(東京、神奈川、千葉、埼玉)で1.32を上回っているのは東京だけです。
※神奈川1.03、千葉1.10、埼玉1.15 です。


少し細かい資料を見るだけでも、仕事の内容や地域によって、求人倍率に差があることが分かります。

※詳細が知りたい方は、下記に厚生労働省のリンクを貼っておきますのでご覧下さい。



4.働き方の変化によって、求人倍率1でも油断できない時代がくる?


ここからは、私の仮説ですが、今後は求人倍率が1を超えていても、仕事がない人が続出するのではないかと考えています。

なぜそのように考えるかというと、「テレワークの普及」と「副業する人の増加」の2つの要素が、求人に対して影響を与えると思うからです。

◆ここ最近、大手企業が副業を解禁するという記事が増えています。

下記は、先週日経新聞の1面に載っていた、ライオンの記事です。


副業が増えるということは、1人で複数の仕事(職種)などを担うということです。

求人倍率1.32という状況で考えると

①副業せず、1人が1つの仕事をする場合

100人に対して、132個の仕事がある状態といえます。
132個の仕事を100人で分け合う状態なので、
132の仕事 / 100人 =1.32 で計算されます。

②全員が副業(2つの仕事)をした場合・・・・

この場合、働く人が倍になったようなものなので、
132/100人×2個の仕事 = 0.66倍となります。

③働いている人の半分や、四分の1の人が副業をした場合・・・

<半数が副業すると>
132/(50+50×2) = 0.88倍となります。
※50というのは本業だけの人、50×2というのは副業をしている人

<四分の1が副業すると>
132/(75+25×2) = 1.1倍となります。
※75というのは本業だけの人、25×2というのは副業をしている人


上記の計算から、四分の1の人が副業をすると、今1.32と見えている数値は、実際には1.1倍ぐらいの求人しかないということもあり得ます。

中小企業からすると、「副業なんてまだまだ現実的ではない・・・」と思うかもしれませんが、

日本で働いている人のうち、大企業で働いている従業員数は全体の約31%というデータもあります。

つまり、大企業の人が副業をするのが当たり前になると、この4分の1という数字は現実的なものになります。


もちろん、1人が副業を始めたからといって、計算したように1人で2人分の仕事をカバーできるということはないと思いますが、2,3人が副業することで、1人分の求人がなくなるということは十分考えられます。

また、副業する数も、1人2つではなく、優秀であればあるほど、3つ4つと掛け持ちして仕事をする人も増えるかもしれません。

すぐにはこのようにならなくても、近い将来、きっとこの副業によって、見た目の有効求人倍率と、実際の求人倍率というのは差が出てくると私は思います。

◆そして、副業については、「テレワーク」の普及によってますます加速します。

今までは、オフィスに出社して、そこで仕事をするというのが当たり前でしたが、これからはその常識もなくなります。
そうすると、家にいながら、複数の会社の仕事が容易にできる環境になります。

エリアも関係ありません。東京に数でいようが、テレワークでOKならば、北海道から沖縄まで、どこの会社の仕事もできます。

これからの日本は、「仕事を選び、いくつも掛け持ちできる人」と「仕事を選べず、職を失う人」に大きく2極化すると考えられます。


今、求人倍率が1.32だから、売り手市場だからと言って油断をしていると、数年後に無職になる・・・・ということもあり得るかもしれません。
※私自身への自戒も込めて・・

最後まで読んで頂きありがとうございます。


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