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2024年3月の記事一覧

沈黙

私は誰にもなんとも思われたくないから
嫌われたくないから
好かれたくもないから
いつでも
どこでも
黙っている

不穏な空気で包まれた空間に
何とも思っていない
他者の声が混じる
そこには偽りの共感がピーチクパーチク

私にはこの嘘に満ちた空気が嫌い
怒りだけが本物で
共感や優しさは嘘

嘘は容易く
真実は難しい

沈黙を頑なに守る
私もまた嘘つき

春の憂鬱

けだるい鮮やかさが
冷たい部屋を通り抜ける

死を望みながら常に散漫と泳ぐ鯨
迷子になって…
食べ物が無くなって…
愚かな専門家は自死の可能性を論じない
人間だけが自殺するなどとは何という思い上がりか!

突然!
パッと道路に飛び出す獣達!
彼らは道を渡ろうとしたのではなく
自らの道を止めたのだ

見よ!
死に損なった無様な姿!
死のうにも死にきれずヨタヨタと引き返す
道が延びてしまった…
可能性

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砂浜

書こうとすれば
言葉は消えていく

空想

空調の音が一定で鳴り続ける灰色の部屋
世界が孤独に満ちていることが
ようやくわかった
ようやくわかった

鐘の音がする
お経が聞こえる
あなたは手を合わせて何を祈るのか?

まともな状態ではいられない

誰が死んで
誰かが置いていかれる

そんな淋しい世界

行方知れずの魂はどこへ向かうべきか

宇宙的死

多分僕らは死んでいる

生きている証拠なんてこれっぽっちもない
生きていると思い込んでいるだけ

ああ、
よく考えれば
思い込みという奴は恐ろしい

人間は生きているとも死んでいるとも考えてしまうのだから

正確には生きても死んでもいない

ましてや夢ですらなくて
空中を舞う埃のように漂っているだけ

痛みや苦しみは生きている証拠ではなく
それは楽しみや喜びも同じ

一切が一瞬で
振りむけば何も残

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錯綜

つぎはぎの思い出で彩られた私の世界
朝になって一つ一つ剥がしていくと
真っ白な世界

記憶は空白で
何もない
何もない

落ちた布は元に戻らず
寒さで凍える朝

誰にも会わず
誰にも会えず
どこかに行こうとしても
何もない
何もない

夢の中で大勢に囲まれ
懐かしい歌が聞こえる、聞こえる
あの合唱は絆で
目に見えないものを結びつけていた

全国、
いや全世界のみなさん
おはようございます!
おはよ

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