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瞬間を切り取る。
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深夜の花火

深夜にきらめく楽しい思い
──私達案外上手くやっていけるんじゃない?
ぽっと照らされる未来

だが相手の顔暗くて見えない
答えを待つが、どこにも答えは無い

瞬間の光は
私の内側だけを盛大に照らした

どこにも届かない光

──きっと上手くいくよ
あなたの瞳に光は無かった

思い上がりの花火は
真っ暗な空に消えてなくなる

不安

不安という木に縛り付けられて
身動きできない

止まり木に宿る鳥達は
糞を垂らしてはどこかへ飛び去る

交差点

真昼時
赤く点滅するランプと
爽やかなブルーのシャツ
車が2台仲良く並んでいる

険しい顔をした人々が
うろうろと
誰かと誰か話している

無関心、あるいは関心のある車たちが通り過ぎる

しばらく経って同じ道を通ると
何事もなかったように
何かあったのだけれども
その痕跡は消されていた

夜になると
消された痕跡すらも
記憶の中から消されていく

行方不明者

後ろ姿は行方不明者
どこにも顔はなく
僕は似たような人をいつでも探している
遠くから声をかけても
振り向きもせず
どこかを目指してあるいているだけ
記憶は曖昧になっていき
ぼやけた
鮮度の低い面影が
流れる雲のよう

記憶からも遠ざかっていく
あなたは
行方不明

温度

季節にそぐわない暑さなのに
長袖のあなたは「寒い」という

いつからか、
夏でも寒い日があれば
冬でも暑い日がある

多分、
そんな風に
あなたを見つめていた
そんな風に
あなたを眺めていた

しばらくエアコンを使っていない

気にならなかった温度差は
耐え難い苦しみに変わり
まだ寒い春を過ごしている

長袖のあなたも不機嫌な顔をしている

薄暮

飛行機雲が直角描かれて
気怠い空はどこまでも続く

目の焦点は定まらず
どこかを見ているようで
どこも見ていない

赤い光と青い光だけが道標

オレンジ色の空は
警告か、不測の未来を危ぶんでいるのか

わからない、わからない

自分が何を望んでいるのかもわからないまま
一日が終わっていく

何が大事で
何が大事じゃないか
何を切り捨て
何を守るか
何を得るか

最初から何も無いのに
何かあると思っ

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あなたの嫌いを教えて

あなたが不意に口ずさんだ
「あの人嫌い」

真っ白な布に
一つシミがついた

私は綺麗なものより
汚れたものが好きで

あなたの好きより
あなたの嫌いが好きなの

優しさは退屈
笑顔もつまらない

真っ白な日々に
墨を垂らして...

おかしな夢

真夜中になると
あれやこれやの
記憶のガラクタが動き出す

涙を流すブリキのロボット
恋にときめく綺麗なお姫様
前にしか進まない犬のおもちゃ

みんないなくなれば
僕の存在は希薄になる

秘密は秘密のまま
誰にも話してはいけない

話してしまうと
それは「現実」になる

うっかり話してしまった僕は
懐かしい
得ることのできなかった過去を
いつまでも、いつまでも
悔やんでいる

ああ、話さなければ

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きらめき

少年の夢が
地に落ちた時
まだこの先には何かあるはずだと
また新たな夢を架ける
勢いを失った鳥は墜落すれば
もう翔けまい

私はまだ寝不足で
もっと夢を見たがる
美しく成長したあなたは
もう違う人で
遠い国の人
いや、夢の中の人

昨日の夢と
明日の夢
いったいどれほどの違いがあっただろうか

今日のきらめきは
燦々と地を照らし
何かを燃やし尽くした

沈黙

私は誰にもなんとも思われたくないから
嫌われたくないから
好かれたくもないから
いつでも
どこでも
黙っている

不穏な空気で包まれた空間に
何とも思っていない
他者の声が混じる
そこには偽りの共感がピーチクパーチク

私にはこの嘘に満ちた空気が嫌い
怒りだけが本物で
共感や優しさは嘘

嘘は容易く
真実は難しい

沈黙を頑なに守る
私もまた嘘つき

春の憂鬱

けだるい鮮やかさが
冷たい部屋を通り抜ける

死を望みながら常に散漫と泳ぐ鯨
迷子になって…
食べ物が無くなって…
愚かな専門家は自死の可能性を論じない
人間だけが自殺するなどとは何という思い上がりか!

突然!
パッと道路に飛び出す獣達!
彼らは道を渡ろうとしたのではなく
自らの道を止めたのだ

見よ!
死に損なった無様な姿!
死のうにも死にきれずヨタヨタと引き返す
道が延びてしまった…
可能性

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砂浜

書こうとすれば
言葉は消えていく

空想

空調の音が一定で鳴り続ける灰色の部屋
世界が孤独に満ちていることが
ようやくわかった
ようやくわかった

鐘の音がする
お経が聞こえる
あなたは手を合わせて何を祈るのか?

まともな状態ではいられない

誰が死んで
誰かが置いていかれる

そんな淋しい世界

行方知れずの魂はどこへ向かうべきか

宇宙的死

多分僕らは死んでいる

生きている証拠なんてこれっぽっちもない
生きていると思い込んでいるだけ

ああ、
よく考えれば
思い込みという奴は恐ろしい

人間は生きているとも死んでいるとも考えてしまうのだから

正確には生きても死んでもいない

ましてや夢ですらなくて
空中を舞う埃のように漂っているだけ

痛みや苦しみは生きている証拠ではなく
それは楽しみや喜びも同じ

一切が一瞬で
振りむけば何も残

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