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野窓 礼峰
2024年6月26日 22:09
1 これは少しだけ未来の話。 幸崎角造は古くなった椅子に腰かけて本を読んでいた。 ──つまらんな。私ならもっと素晴らしいものを書ける。 読みかけの本を閉じ、物思いにふける。彼は読書家であったが作家ではない。かつては資産家であった彼も近年の不況のせいですっかり落ちぶれていた。ただ働かなくても生活できるだけの金はあった。要は年金暮らし。年金があっても生活できない連中はごまんといたがそれに比