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小説

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夢のような時間のこと。
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2024年3月の記事一覧

本屋

 精神的に不安定な状態がいつまでも続いていて、僕は近所にある本屋の前に車を停めた。何故精神的に不安定なのかは僕自身にもよくわからない。だいたい原因がわかるくらいならそれを解決するための努力をすればいいだけだから、そもそも問題にすらならない。特に何かしら切羽詰まった問題に直面しているわけでもない。そもそも複合的な事によって憂鬱なのかもしれないし、そもそも何もないことが原因なのかもしれない。だとすれば

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都合のいい女

 ──私はあなたにとって都合のいい女だから一番なんでしょ。
 突然放たれた彼女の言葉は今になって思えばもしかしたら確信を突いていたのかもしれない。
 ──そんなことはないよ。僕は、僕は、そういう風に思ったことは一度もないよ。
 しどろもどろになった僕はスマホをいじる彼女の姿をどこか遠い国からやってきた人のように眺めていた。いままで喧嘩もしたことなく、おだかやかな日々を過ごしてきたというのに。なぜこ

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