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何かがたまらなく好きな人が、たまらなく好き


早稲田大学の近くで、「SOJO」というビーガンでエスぺランティストの店をみつけた。それだけ聞くと意味がわからないという人が大半だろう。


ビーガニズム
動物を搾取しない生き方。動物由来の食べ物(肉+乳・卵などの副産物)を食べない人を「ビーガン」と呼ぶ。もともとは動物の権利という観点から始まった運動だが、サステナビリティからの観点からもビーガンに切り替える人が増え、日本にも少しずつビーガンのお店や商品が普及し始めている。

エスペラント語
国際公用語として19世紀に作られた人工言語。
英語が今ほど普及されていない時代に、国際連盟の公式言語として採用しかけるぐらい一時期は注目を集めた。世界公用語からはほど遠いものの、「すべての人にとっての第二言語」という中立性や、歴史的に最も話者の多い人工言語として、今でも学ぶ人は世界中に存在する。日本にも1000人以上の話者がいるらしい。


この2つのニッチな分野をかけあわせたレストランが「SOJO」。
店内は語学やエスペラントに関する本、菜食やビーガニズムの本がずらりと並び、ビーガン商品、エスペラントコミュニティにまつわる資料もあちこちに展示されている。


エスペラント語については前々から知ってはいたが、店長とお話しているとだんだんとその魅力に引き込まれてしまう。



グローバルでも、日本国内でも、エスペラントにまつわる協会がいくつも存在する。代表的なところは、なんと毎月マガジンを発行しているという。もちろんすべてエスペラント語なのだが、エッセイだったり、活動報告だったり、オリジナルの詩だったり、内容は雑誌や投稿者によってさまざまだ。

どこの国で話されているわけでもなく、ビジネスで使えるわけでもないこの不思議な言語のために、完全ボランティアで執筆をしたり、雑誌の発行をしたり、イベント開催をしている人々が何百、何千人といるのだ。

熱狂している理由は人それぞれだろう。中立な公用語という思想に共感していたり、人工言語としての仕組みに関心があったり、共にエスペラントを学ぶ仲間・コミュニティを大事にしたいという人だっているはずだ。

でも時間や労力や意識をそれだけつぎ込める根底の理由は「好きだから」に他ならないと思う。



これがオタクの素晴らしさだ。

役に立つとか、得をするとか、そういうことではない。
好きで好きでたまらないという論理で説明できない愛は、どこからくるでもない、心の奥底から湧き出るエネルギー。

その溢れ出る想いを、恥じることなく、押し殺すことなく、全力で放出して何かを生み出せる人々が、私はたまらなく好きだ。

そこに利便性や機能性や価値を求めてはいけない。好きを原動力に行動できることそのものが人間らしく、尊くて、美しく、愛おしいのだ。


さっそく、店長さんが昔使っていたエスペラント語の教科書を300円で購入する。私の中でもエスペラントへの愛の種が、芽を出し始める。


2020年12月02日 東京都雑司ヶ谷
もえん

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