最近の記事

「窓の魚」を読んで

「作家は冒頭の書き出しを大事にする」という言葉をよく耳にすることがあるだろう。 名作と呼ばれる本ほど、作家は冒頭にその本のテーマや主張したいことを持ってくることが多い。 窓の魚はその中でも、作家が主張したいことを冒頭で丁寧に書き出した本である。逆を言えば冒頭の意味を理解しなければ、何をテーマに書いたかが分からないようになっている。なぜなら、この本はミステリー要素がかなり強く、大多数の人はこの本を恋愛を絡めたミステリー小説として納得している人が多いからだ。 別にその解釈でも構わ

    • 「しろいろの街の、その骨の体温の」を読んで

      皮膚の内側で否応なしに成長する骨の、皮膚を裂いてくるような痛みを感じる本だった。 この本からはノスタルジーを感じるような描写はほとんどない。温かみもなければ色も白色、そのおかげなのか登場人物の色が、個性がくっきり感じ取れる。 物語はニュータウンに住む少女の群像劇。どんどん土地開発は進み、新しい駅が建ち、同じ形の同じ間取りの家が立ち並び、子供の秘密基地的な裏山はこぎれいな公園に変わり、どんどん伸びていくその白と、成長していく少女の皮膚の内側で伸び続ける骨とリンクされて物語は

      • 「正欲」を読んで

        オードリーの若林さんがとある番組で、「自分はコメンテーターはやりたくない。なぜなら街で急に叫んじゃう人の気持ちが分かるから。ただ、世間はそんな意見を求めていないし、製作にかかわる人にも迷惑がかかってしまう。」と発言をしていたのをよく覚えている。 自分にも似たエピソードがある。学生の頃母親と警察24時的なテレビを見ていて、女性の前でコートを広げて自分の恥部を晒した男がいるという無線を受け、警察が出動する場面が流れていた。 母親が「なんでそんなことするんだろう」と言ったので、「

      「窓の魚」を読んで